『グレート・ギャッツビー』4
俺は立ち止まった……。ちょうど市立図書館の前の公園のところで。俺のうしろにいた笹葉もそれにつられて立ち止まった。意気地のない俺は後ろを振り返らずに言った。
「やっぱり俺達、別れたほうがいいんだろうな……。やっぱり自分の心は偽り続けられない」
「………」笹葉は無言でうつむいている様子だった。
「……ほかに……。好きな人がいるんだ……」
誰が、とまでは言わなかったが、状況を考えれば十分に伝わるはずだ。
「……ごめんなさい……」
笹葉はまるで自分に責任があるかのように謝った。
「笹葉が謝ることじゃない……。俺が……。俺が一人で勝手に……」
「…………」
俺はそのまま振り返ることなく彼女の家とは別の方向へと向かっていった。ただどこに行くあてもなかったが、ただ、その場所から逃げ出したくなっただけだ。俺の独りよがりで今度は笹葉まで傷つけてしまっている。これでもう自分を弁明することもできない。ならば今度こそ自分の意思で行動しなければならない……
再び繰り返してしまった俺の最大の過ちは、自分が前に進むためだとか、葵のためだとかくだらないことを言いながら、笹葉の気持ちをろくに考えていなかったということだ。
ひとりで小川の淵に立って月を眺めながら考えていた……。なぜ、優真は『グレート・ギャッツビー』を俺に薦めたのか……。やはり優真は俺の葵に対する気持ちに気づいていて、それでなお、復縁しようとするつもりならギャッツビーのような不幸な結末が待っていると警告していたのではないだろうか……。だとしても俺はもう、迷わない。ギャッツビーが如くこの胸に残る彼女への想いを成就するため、手段を選ばず行動を起こす……
俺は携帯電話をとりだし、優真の番号をコールした。
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