(2)忍者校
「……へ?」
新堂が間抜けな声で応じる。一塁手の高羽が、うんうんとうなずいた。
「七回から、明らかに違うチームみたいだっただろ? っていうか突然忍者出現サプライズって感じ」
「確かに、そう感じましたけど……感じただけで……」
「まずユニフォームだ。六回までは普通の黒いユニフォームだったのが、七回からはどう見ても忍者の黒装束になってる。規定ではユニは一種類だけだと思ってたけど、審判は何も言わないね」
「でも忍者って、普通は全裸ですよね?」
「それはウィザードリィの話だろ。あのゲームの影響で、古典的な忍者は全裸が基本ってことになってるが、最近は忍び装束って奴が忍者のユニフォームらしいね」
高羽が首を振って、相手チームのベンチを眺めた。なるほど全員が黒装束だ。
「それに身体能力も忍者並みに変わったろ? この試合、うちのエースの森田先輩が初回から六回まで無安打に抑えて、俺たちは打ちまくって八点も上げた。だが七回から、奴らは一変した……まるで別人みたいにね。あっという間に追いつかれかけたよ。抑えの家城先輩がどうにか一点リードを守り切ってくれたけど、この回で先輩も限界が来ちまった」
「っていうか別人だろあいつら」と、三塁手の中林。「六回まではどこにでもいる普通の高校球児ってツラだったのによ、七回で守備についた奴ら、顔つきも体つきも、どう見ても高校生じゃねえ」
「で、でもそんなの……女教師モノや女子高生モノのえっちなビデオに出てくる『男子校生』も同じじゃ……」
新堂の反駁を無視して、二塁手の小泉が一同に和した。
「どうやら地方大会の時かららしいよ。六回まではごく普通の、ちょっと強いくらいの高校生メンバーなのに、七回に入った時点で負けていると、何故か顔つきが一変して異様に強くなるんだって。常人慣れした動体視力、圧倒的な走力、獣じみた打撃力。大会委員が確認しても、『試合になると人が変わるんです』って言い抜けているそうだよ。俺が思うに、あれが『変わり身の術』って奴じゃないか?」
「それってただの成りすましでは?」
「名前も念が
「き、きっと偶然ですよ」
「ま、もし奴ら選手全員が忍者だったら、忍者校ってことになる。俺たちが忍者校と対戦するのは、練習試合でも公式試合でも、これが初めてだ」
パンッ、と高山がミットを叩いて議論を打ち切った。「だが忍者って言っても、手裏剣や苦無を投げてきたりマキビシ撒いたりするわけじゃない。脚がやたら速くても、打撃が半端なく当たっても、俺たちが今やることは一つだけだろ?」
一同がうなずくのを待ってから、高山は不敵に笑った。
「アウトを三つ取って、優勝することだ!」
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