第9話 深い夜

 幻影が解けた。

奥にいるヘルヴィンの顔は涙でぐちゃぐちゃになっている。きっと私もそんな顔をしているのだろう。


ヘルヴィンと横に並んで星を見る。

「今さらだけど誕生日おめでとう。」

「ん、ありがとうございます。」

ヘルヴィンが続けざまにいう。

「ミリア、最後までユフェンのことを話してたよ。」

「…そうですか。」

「あ、最後の言葉はチョコが食べたいだったか。」

「む、妬けますね。」

「チョコに妬いてどうすんだよ。」

「……フフッ、アハハっ。」

私が笑うとつられたようにヘルヴィンも笑った。

「ククッ、ハハハッ。……あ!流れ星!」

「え?どこですかどこですか??!!」

「もうなくなったよ。」

「あ!見えた!」

「きれいだなぁ。」

深い夜に星が瞬く。

 私たちはしばらくあの冒険を、あの思い出を、深く深く談笑した。

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