第8話 ミリア・ファースト
「久しぶり。君が僕を見ているということはきっとそういうことなんだろう。」
いつものようにゆるやかに、けど安心感のある笑い方をしてくれる。
ふと足元に広がっている幻想的なガラスのような花に気づく。
幻影。ミリアの能力の一つだ。
そして、私が最初に見た能力。
あの日のようにガラスのような花があたり一面に広がっている。
きっとあの懐中時計に仕込まれていたのだろう。何年も前から。
「ユフェン。僕は君に出会えて本当に良かった。」
「私も…同じです。」
「きっと君も同じだろ?」
いかにも自信満々に尋ねている。
「一体君に会って今日で何年が経つのかな?ひーふーみー……7年かぁ。」
いけない…涙が止まらない
「まさかそんなに経っているとは…!時間ってものは早いねぇ!」
「フフッ、そうですね。」
「出会ったときのこと、覚えてる?」
「もちろん!」
「君は当日13歳!ちびなのに僕には容赦なかったよね。」
「うるさいなぁも……!」
ガラスの花が次々と風に吹かれたように消えていってることに気づく。
「………ごめん、ユフェン。残念だけどもう時間のようだ。」
声が出ない。
「願わくば僕らに幸せが訪れんことを。約束だ。」
そう言ってミリアが小指を差し出す。
そこに私も小指を絡める。
「「下を向いても揺れても、自分らしくまた、歩いていけばいい。」」
そう言い終わると、ミリアもまた風に吹かれたように消えていく。
「待っ…てミリア…!!私…はまだっ…!」
かろうじて絞り出した声は風に飲まれて消えていった。
改めて感じた。
ミリア・ファーストは死んだのだと。
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