勘違いと発覚です


 短めなので後ろに登場キャラのステータスを少し乗せます。

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 騒動の後、夕食の時間。


 朝食を食べたところと同じ部屋で、勇者たちは食事をとる。

 部屋は、朝とは違い、どこか騒がしい。

 チラチラと刺さる鬱陶しい視線と、興味の声が、座っているだけのルイに集中する。


 勇者以外に一人の人? がいるからなのだろうか。

 それとも勇者じゃない人が明らかにいるからだろうか。

 勇者だということを、そもそも気にする必要があるのだろうか。

 この世界に召喚された異世界の人をこの部屋に集めるのなら、一応ルイも当てはまっているのだから。


 ルイは、周りの視線や興味の声を気にすることなく、全て知らん顔で、目の前の食事に集中している。

 ーーうんざりする。

 周りには、今夕食をのんびり食べているということがわかっていないのか。食事の時間くらい落ち着かせてもらえないのか。

 いくら、見た目が人と違っていても、そこまでじっくり見る必要はないだろうに。


 自分の背中から生えている翼の方をチラリと横目で見る。

 確かに人族しかいない異世界から来た人にとってはこの翼は珍しい。だが、チラチラと気づかれないように見ようとするなら、どちらにしろ気づいているから堂々と見ればいいものを。


 この場所の雰囲気は、不快感しかない。

 久しぶりに誰かと食事を取りたいからって、勇者が食べている場所に乱入したのは失敗だったのだろうか。

 食べ終わって、ルイは、はぁとため息を吐く。


 まあ、とりあえず、おかわりをするとしよう。

 立ち上がって、皿に追加の食事を乗せていく。一回目は遠慮していたのか、最初に食べた量の倍ほど乗せた後に、元の席に戻る。



「ルイちゃん、隣、座ってもいいか?」

「は?」



 ーー何を言っているんだ? 銀条大輔(お前)…………。


 ルイの隣の席に、自然に座った銀条を見て、この場にいた全員がそう思った。

 一度、銀条はルイの威圧に失神させられている。それも、ルイに向かって銀条が怒鳴ったからで、完全な自業自得だ。

 そんな、初会話で最悪の会話を交わしたにも関わらず、何事もなかったかのように関わってくる銀条に、ルイは呆れることしかできない。


 銀条が馴れ馴れしくなっている理由は、ルイに威圧され失神したからなのだが。都合よく、ルイが名前を言ったところから記憶が吹き飛び、これから初会話をかわすということに、銀条の中ではなっていた。



「俺、銀条って言うんだ。ルイちゃん、俺と友達になってくれないかな?」

「気持ち悪いから断る」



 ルイはバッサリと断った。

 それもそうだろう。

 一度、文句を言うために大声で怒鳴ってきた相手が、猫を被って媚びを売ってきたらわかりやすすぎて吐き気がする。


 ちゃん付けをしてくる人と友人になりたいわけがない。ルイは、男だからだ。いくら子供みたいで性別が分かりづらくても、一応、男なのだから。



「じゃあ、ルイちゃんのこと教えてくれないかな?」

「断る」



 あからさまに不快そうな表情をしても、気づかない銀条。

 勝手に性別を勘違いして、しかもちゃん付けで呼んでくる銀条。

 先ほどの出来事を無かったことにしている銀条。


 このイラつきを我慢するのが、ルイは限界になっていた。



「ルイちゃん……」

「うるさい。俺は男だ。それぐらい気づけよ」



 そうルイが言うと、銀条はあからさまにがっかりし、「なんだ男かよ」と舌打ちをした。

 分かりやすすぎて、ルイはゾワリと鳥肌をたてた。 

 今まで気づいていなかった銀条を指差して、クラスメイトはくすくすと笑う。



「お前、今まで気づいてなかったのかよ。ウケる」

「……っうるせえ! どうせお前らも気づいてなかっただろうに」

「俺らは気づいてたし、いい感じに気持ち悪くて見てて面白かったぜ」



 一人が銀条をからかった後、少しずつ笑いが広がり、ほとんど全員がゲラゲラと笑うようになる。

 その中心である銀条が、「黙れ!!」と声を荒げて笑うのをやめさせようとするが、笑いは収まらない。


 勇者たちの視線が銀条に集中していて目立たなくなっている隙に、ルイは堂々と部屋から出ていった。





 笑いが一通り収まった頃、クラスメイトの一人・さくら ひなが「ああ!!」という甲高い声を出した。

 ふらついたところを、双子の姉・さくら みなみが支える。

 その二人の周りに、突然何事かと言うように、わらわらとクラスメイトが群がっていく。



「お姉ちゃん、私……なんでクラスメイトが一人いないこと忘れてたんだろう」

「えっ……?」



 ひなの忘れてたという声で、戸惑いが広がっていく。


 ところどころで「そういえば!」や「なんで忘れてたんだろう」と言う思い出したというような声が上がっていく。


 次々とみんながこの場にいないクラスメイトのことを思い出す姿を見ていた恵美たち四人は、いまさら気がついたのか……、と言うような視線を向ける。


 四人の他に、紫苑 アリスも全く動じていない、むしろ冷めた目でクラスメイトのことを見ていた。

 鋭い眼光で騒いでいるクラスメイトを見ながら、強い語気で聞く。



「ねえ、あなたたちは逆になんで忘れられていたの? クラスのメンバーが一人かけていることに」



 ーーあんなに特徴的で印象に残る人をどうして忘れられるのか。

 アリスの脳裏には、低身長で性別が分かりづらい前髪を伸ばしている白鳥 涙の姿が浮かんでいた。



「それは……」



 アリスに指摘され、今、思い出したばかりのクラスメイトが眉に皺を寄せて言葉を詰まらせる。

 アリスが眼光をさらに鋭くしたため、クラスメイトがヤケクソ気味に答えた。



「それは、単純に忘れてたからだ! あいつの名前も忘れたし!」



 ーー名前すら覚えていない? あんなに目立っていたのに。あなたたちがあんなに嫉妬して執着していたのに?

 

 ーーイライラする……。


 アリスは、そう言ったクラスメイト・桐生きりゅう 蒼華そうかを上から目線で睨みつける。



「逆になんで忘れることができたの?」



 そのまま圧をかける。

 そのアリスの姿は、あまりにも迫力があり、自分の体が重くなったかのように感じさせられた。



 ーー確かにそうだ。

 恵美はそう思った。


 よく考えると、クラスでも浮いていた涙が、召喚された後忘れられると言うのはおかしな話だ。恵美や誠司と仲がいいが、普段は孤立している。そんな人気者に挟まれている隅っこ少年が忘れられるはずがない。

 恵美は、アリスに気付かされた。



「アリスはなんで気づいたの?」



 恵美と誠司以外に、穂乃果しか気が付いていないと思っていた。

 いつもクラスをまとめていた委員長の金竜ですら覚えていなかった。聞いても最初はピンときていないような様子でもあった。


 だから、不思議だった。

 なんで涙のことを他の人のように忘れていなかったのか気になっていた。


 恵美に聞かれたアリスは、ハッとした後、腕を組んでそっぽを向いた。



「っ、べつに! 同じクラスの人は全員覚えてるからよ! 忘れているあっちの方がおかしいんだから!」



 くすりと恵美は笑った。



「……そっか」



 親友で幼馴染の涙のことを覚えていてくれた人がいて嬉しかった。



「るいくんを覚えてくれている人がいて嬉しい。ありがとう」

「……ふん! たまたまなだけよ!」

「それでも嬉しかったから」




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ステータス


一応全員考えてある。


とりあえずよく出てくるキャラクター四人。

あとはなんか気に入っているアリス+中二病三人衆を。


名前:青花 恵美  

年齢:14歳 

種族:異世界人

称号:異世界の勇者

ジョブ:聖女

レベル:1

魔法:風、水、氷、光、聖

スキル:鑑定、異世界言語、杖術、聖女の祈り、天の祝福



名前:赤坂 誠司  

年齢:15歳 

種族:異世界人

称号:異世界の勇者

ジョブ:聖騎士

レベル:1

魔法:無、地、火、雷、聖

スキル:鑑定、異世界言語、剣術、天の祝福



名前:空島 穂乃果 

年齢:14 

種族:異世界人

称号:異世界の勇者

ジョブ:魔法師

レベル:1

魔法:火、毒、氷、風、土、空

スキル:鑑定、異世界言語、杖術、同時魔法術



名前:金竜 聖也 

年齢:15歳 

種族:異世界人

称号:異世界の勇者

ジョブ:勇者

レベル:1 

魔法:無、火、水、風、土、雷、氷、樹、光、聖

スキル:鑑定、異世界言語、剣術、限界突破、天神の加護

 


名前:紫苑 アリス  

年齢:14歳

種族:異世界人

称号:異世界の勇者

ジョブ:調教師

レベル:1 

魔法:無、毒、雷、闇

スキル:鑑定、異世界言語、契約、魔物強化



名前:黒部 千  

年齢:14歳  

種族:人族

称号:異世界の勇者

ジョブ:死霊術師

レベル:1 

魔法:無、毒、闇、魔

スキル:鑑定、異世界言語、杖術、死霊召喚



名前:水月 龍次郎  

年齢:15歳  

種族:人族

称号:異世界の勇者

ジョブ:忍者

レベル:1 

魔法:無、風、毒、闇

スキル:鑑定、異世界言語、暗器術



名前:夏冬 清三郎  年齢:15  

種族:人族

称号:異世界の勇者

ジョブ:侍

レベル:1 

魔法:無、風、雷

スキル:鑑定、異世界言語、刀術、纏術



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