第2話

嘘だ…

全部夢だ…!

シヲンがこんなこと言った記憶がないなんて!

思い出ではないシヲンがここにいる?

そんなわけないっ!

そんなわけっ!

 ギッ…とベッドのスプリングが軋み、シヲンが自分の上に覆いかぶさってきた。

いくら目を閉じても、顔を背けてもまったく無駄だった。

『こっち向いてよ…』

フフフ…と笑うシヲン。体がカタカタと震え、反らした顔がゆっくりと天井に向けられた。

体がまったく言う事を聞かない。

「…」

呼吸が…、息が出来なくなりそうだ。

ヒビキの目は大きく見開かれ、髪先はガタガタと震えた。金縛りにあったときのように体は硬直して、緊張のあまり気を失いそうだ。

「…」

死神のはずだ。

ソレを証拠に重みを感じない。

幻だ。

 何度も何度も言い聞かせる。

きっと目を閉じて、次開けたときには跡形もなく消え去っているはずだ。

「…」

目を…

閉じ…

『ヒビキ?』

その声に体は無意識に反応し、目を開いた。

『どうしちゃったのかな?白いお洋服なのに…』

シヲンが不思議そうに自分の腹を見た。

「!!」

血だ…!

真っ白いワンピースにまるで真っ赤なハイビスカスをプリントしたような真っ赤な血がジワジワと広がってきている。

ギリギリギリギリ…ッと腹を締め付けられたような痛みがヒビキを襲い、目の前の光景は皮肉にも、よりリアルに感じられたのだった。

「―――――――…っ」

ヒビキは気が狂ってしまいそうになりながら、両腕を動かした。震えながらの両手は互いに行き着くまで異常に時間がかかったような気がした。

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