誰が積み木を崩したのか…。

血に染まる悪夢

第1話

ゆっくり寝返りを打つ。

目を開けると明け方までには程遠い深夜二時。月明かりがカーテンの合間をぬい、部屋の中にまで入ってくる。

「…」

ベッドの脇の小さな机の上には空になった薬のシート。

眠れない。

まるで…犬時代だ。

それに加え…

『こんばんは』

ソレを傍観している気味の悪い奴がいるかと思うと吐き気さえする。

答えては駄目だ。

『酷いですねぇ、無視ですか?』

しっかりと目を閉じる。せめて視界にだけは入れたくない。

『寝たふりですか?』

「!」

瞼の裏にフワリと死神の顔が現われ、ヒビキは思わず目を開ける。

目を開けた世界。それでも死神は壁の端に張り付き、ヒビキを笑っている。

『僕がお嫌いですか?なら、“彼女”にお願いしましょうかねぇ…』

死神はニタリと笑い、周りを取り巻く蝶に飲み込まれていった。

羽の音が紙を擦ったような音になり、聞こえてくる。

「…」

彼女って誰だ?ふと、そんな事を考えた瞬間。

『ヒービーキ☆』

ゾクゾクゾク…と背筋が泡立った。

まさか…

そんな…

シヲン?

驚きのあまり開けっぱなしになった目の前に白い服の女が立っていた。

「…っ!」

ギギギギ…と腹を締め付けられたような痛みに思わず顔を顰める。

脂汗が一気に額に浮き出して、ヒビキの呼吸は無意識のうちに浅くなっていた。

『酷いなぁ…寝たふり?マグロちゃん?じゃあシヲンちゃん頑張っちゃおっかな☆』

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