第2章 第4話:馬車の混乱
「今日は馬車に乗って移動するぞ」
幸運にも馬車が通りかかったため、少しでも早く旅を進めようと、俺は馬車に乗ることを提案した。だが、もちろんセリーナは「アルトと一緒に乗れるなんて素敵!」と大はしゃぎ。何やら不安な気持ちが胸をよぎったが、とりあえず俺はそのまま馬車に乗り込んだ。
「もちろん隣に座るわよね!」
セリーナがにじり寄ってくる。俺はできるだけ距離を取ろうとしたが、彼女はしぶとく俺の隣に座り込んでくる。馬車の揺れに合わせて、彼女の体がぶつかってくるたびに、俺の忍耐が試されている気がした。
「アルト、外の景色も素敵ね!」
彼女は楽しそうに外を眺めながら、俺の肩に頭を預けるような仕草を見せる。俺は冷たく「離れろ」と言ったが、彼女は全く意に介さない様子だ。
しかし、そのとき突然、馬が驚いて暴れ出した。馬車は大きく揺れ、俺たちはバランスを崩して転倒しそうになる。
「きゃっ!」
セリーナが声を上げ、俺も体勢を立て直そうと必死になった。だが、セリーナはすかさず杖を振り、なぜか魔法を発動させた。おそらく馬を鎮めようとしたのだろうが、結果的には逆効果だった。
「ちょっと待て!魔法は必要ない!」
だが彼女は焦っていたのか、ますます強力な魔法を使い、さらに混乱を招いた。馬車が揺れるたびに光や風が巻き起こり、馬はさらに興奮して暴れ出す。
「馬が…馬がどんどん暴走してるぞ!」
馬車の御者が叫び声を上げながら必死で手綱を引いているが、セリーナの魔法のせいで状況は悪化するばかりだ。俺はとっさに彼女の杖を掴み、強引に魔法を止めた。
「だから言っただろ、余計なことはするな!」
「ご、ごめんなさい…」
ようやく静かになった馬車の中で、セリーナがしょんぼりと小声で謝った。俺はため息をつきながら、心の中で誓った。二度と馬車には彼女と一緒に乗らないと。
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