第2章 第3話:派手な戦い
「また魔物か…」
俺はため息をつきながら剣を構える。道中、何度も魔物に遭遇してきたが、今日は特に凶暴な奴が現れた。大きな牙をむき出しにして、こちらを睨んでいる。俺は静かに構えを取ったが、背後から予想通りの声が響いた。
「アルト!私に任せて!」
セリーナが杖を振りかざし、得意げな表情を浮かべている。俺はすぐに制止しようとしたが、彼女はすでに詠唱を始めている。
「やめろ、俺がやる!」
だが、セリーナは聞く耳を持たず、杖から放たれる光が魔物を包み込んだ。次の瞬間、爆風が巻き起こり、魔物は吹き飛ばされた…が、同時に周りの景色も壊滅的な状態になった。草木は倒れ、地面はえぐられ、静かな道が一瞬で戦場のような荒野に変わってしまった。
「やった!無事に倒したわね!」
誇らしげに振り返るセリーナに、俺は言葉が出なかった。彼女が倒したのは確かに魔物だが、その被害があまりにも甚大すぎる。俺が静かに周囲を見渡していると、背後から声が聞こえた。
「なんだ、何があったんだ!?」
振り向くと、森で働いていたらしい村人たちが、呆然とした表情でこちらを見ていた。辺り一面の破壊された風景を見つめる彼らの顔には、驚きと怒りが入り混じっている。
「誰がこんなことを…!ここは村人たちが育てた大事な木々だったのに!」
その言葉に、俺は頭を抱えた。この道は村人が手入れをしていた場所らしく、きれいに整備されていたはずだ。それが今や、セリーナの派手な魔法のせいで荒れ果ててしまっている。
「私がやりました!大丈夫、悪い魔物を退治したのよ!」
セリーナが堂々とそう宣言すると、村人たちの顔は一層青ざめていく。彼らは恐る恐る後ずさりしながらも、怒りを抑えきれない様子だった。
「俺たちのためだって?誰もこんな破壊を頼んでない!」
村人たちの怒りを前に、俺は完全に押し黙るしかなかった。セリーナはまだ得意げに笑っているが、俺の中では静かに絶望が広がっていた。
俺は心の中で静かに誓う。この旅を終えたら、二度と彼女には「任せる」なんて言わないと。
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