第6話:騎士の休息
「今夜は少し離れて野宿しないか?」
俺はできるだけ冷静に、セリーナにそう提案した。ここ最近、彼女に付きまとわれっぱなしで、正直なところ少し疲れていた。いや、少しどころか、かなり疲れている。たまには一人で静かに休みたい。それだけだ。
「えっ、なんで?私、アルトを守らなきゃいけないのに!」
彼女は驚いたように目を丸くし、慌てて俺に近づいてくる。俺は無言で少しだけ距離を取り、「今日は俺一人で休むから」と言い聞かせるように伝えた。
「だ、だって、そんな…寂しいじゃない!」
…いや、俺は全然寂しくない。むしろ、一人になれると思うと安堵すら感じる。彼女のしつこいアプローチから解放される時間が持てるのは貴重なことだ。俺はセリーナを説得し、ようやく彼女が渋々遠くの木陰に座り込んだのを確認してから、寝袋に入った。
「よし…これでやっと休める」
俺は目を閉じ、静かな夜を味わおうとした。しかし、そんな静寂は長く続かなかった。
「ねえアルト、やっぱり寂しくない?」
俺が目を開けると、セリーナが再びすぐ近くに座っていた。俺の方をじっと見つめ、「一緒に寝る?」とまで言い出す始末だ。俺は深いため息をつき、顔を手で覆った。
「…少しは遠慮ってものを覚えてくれ」
「えー?アルト、やっぱり私と一緒の方が落ち着くんじゃない?」
彼女は全く悪びれた様子もなく、楽しそうに笑っている。俺の疲労はさらに深まるばかりだ。仕方なく彼女を無視してもう一度目を閉じたが、完全に眠れるわけもない。
結局、その夜もほとんど眠れないまま朝を迎えた。彼女の「守護者」としてのしつこさは、俺にとっては全く逆効果だ。これが俺の宿命だというのなら、俺はどこまでも忍耐強くいなければならないらしい。
「さあ、今日も元気に出発ね!」
朝日を浴びて元気に叫ぶ彼女の後ろ姿を見ながら、俺は心の中で静かに再び忍耐を誓った。
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