第4話:戦いの余波

「また魔物か…」


旅が始まってからというもの、妙に魔物と出くわすことが多い。今日もまた、襲ってきた魔物を目の前にして、俺は剣を構えた。だが、その時だ。


「アルト!私がやるわ!」


背後から聞こえてくるいつものセリーナの声に、俺は思わずため息をついた。彼女は自信満々に杖を掲げ、呪文を詠唱し始めている。


「いや、俺がやるから、黙って…」


言い終わる前に、セリーナの杖がまたもや強烈な光を放った。次の瞬間、魔物が吹き飛ばされただけでなく、周囲の木々や地面までもが激しく揺れ、見事に破壊されていった。


「お、おい…」


俺は呆然と立ち尽くす。魔物を倒したのはいいが、その代償が大きすぎる。見渡す限りの木々が倒れ、地面はクレーターのようにえぐれている。すると、背後から驚きと怒りに満ちた声が聞こえてきた。


「なんてことしてくれたんだ!」


振り向くと、数人の村人たちが慌てた様子でこちらに駆け寄ってきている。彼らは目の前の荒れ果てた景色を見て、呆然としているようだった。さっきまで平和だった村の一部が、セリーナの魔法で無残な姿に変わってしまっている。


「だ、誰がこんな…!ここは私たちの大切な畑だったんだぞ!」


その言葉に、俺は頭を抱えた。確かに村の畑らしきものが見事に吹き飛んでいる。セリーナが「私がやりました!」と誇らしげに胸を張っているのを見て、村人たちの顔はどんどん青ざめていく。


「いや、待て…」俺は急いで村人たちに向き直り、なんとか事情を説明しようとした。「これは…その、偶然というか…俺が制止しようとしたんだが…」


「ふふん、心配しないで!あなたたちのためにも魔物を一掃したのよ!」セリーナが得意げにそう言い放つと、村人たちの顔はさらに怒りに染まっていった。


「俺たちのためって…!誰が頼んだんだ、こんな破壊行為を!」


村人たちの怒りを前にして、俺は完全に押し黙るしかなかった。セリーナは意気揚々と俺の隣に立ち、「任せてよ!いつでもあなたたちを守るわ!」と満面の笑みを浮かべている。村人たちは呆然とその様子を見つめるばかりだった。


…どうやら俺たちは、この村にはもう二度と戻れないかもしれない。

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