第1話:強引な守護者
「本当に、俺は一人で十分なんだ」
何度も同じことを言っている気がする。いや、実際に何度も言っている。目の前にいるセリーナに対してだ。銀髪の魔女は、俺が何を言おうと笑顔を崩さない。むしろ、俺が断れば断るほど、彼女の目は輝きを増しているようにさえ見える。
「そんなこと言わないでよ、アルト。私はあなたを守るために送られてきたんだから!」
彼女の言葉には、確固たる自信がこもっている。だが、その自信がどこから来ているのか、俺には理解できない。守護者?俺が記憶を失っているとはいえ、今まで誰かに守られるような立場だった覚えはない。むしろ、自分の剣でなんとかしてきたはずだ。
「いや、本当に俺は大丈夫だ。心配するな」
「ああ、謙虚なところも素敵ね!」
全然話が通じていない。俺が真面目に拒否しているのに、彼女は何かの褒め言葉だと解釈してしまうようだ。俺がどう言い返しても、セリーナはすでに俺の「守護者」であるという自己設定を変更する気がないらしい。
「運命の出会いなのよ。こうしてあなたと旅をするのは、必然だったの」
俺にとっては、ただの予期せぬ不幸だが、どうやら彼女にとってはこの上ない幸運のようだ。俺は、ため息をつきながら荷物を背負う。自分一人で記憶を取り戻すための旅に出ようと決めたのに、スタートからこの調子では、前途多難だ。
「さあ!出発しましょう!きっと素敵な旅になるわよ!」
そう言って、セリーナは先に歩き出した。俺の旅は、どうやら彼女と一緒に進むことになりそうだ。だが、これが本当に「運命」なのかは、まだわからない。
一つだけ確かなのは、今後もこの魔女に振り回され続けることになる、という嫌な予感だ。
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