ログ29 Birth Day

~緊急家族会議が行われた一週間後~


俺は自分がムキムキになった理由は多分、パラレルワールドへ飛んで暴豚ピグザムという化け物を倒したことにあるだろうとアタリをつけながらも、その理由があまりにも荒唐無稽すぎて自分でも半信半疑の状態であった。


ちなみに傷は細かい裂傷は一週間が経って、ほぼ消えた。

残っているのは左腕と右脇腹刻まれたような傷跡だけだ。

これも古傷のようになっているので、本当に昔のバイクの事故で出来た傷と言えば皆が皆なっとくするような跡になった。


というか、この一週間職場での対応が本当に大変だった。


先週末までメタボなオッサンだった男が、週明けの月曜日に出社してきたら、身体がムキムキの細マッチョに変わっていたからだ。


やれクスリだの、やれ整形だの色々言われた。

ちなみに見た目も若返ったようで、女性社員の俺への接し方が柔らかくなったのは勘違いではないと思う。

まぁそんなこんなで、俺は役員に呼び出されて、何度も「犯罪に関与していないか?」とか色々聞かれたりしたが、なんとか事なきを得た。


そんなこんなで慌ただしい一週間が過ぎたそんな12月の金曜日の午後。


俺のスマホが鳴った。


どうやら、臨月の妻が産気づいてきたらしい。


俺は課長にその事実を告げるとともに、半休届をだし、他の社員や部下に引継ぎを行いダッシュで帰宅した。


俺の会社から最寄り駅まで徒歩で12分。

メタボな俺が走って9分だった。

今の俺ならと思い全力で走ったところ体力もあるようで息切れもせずなんと5分で駅まで着いた。


『身体が軽いって本当にいいな』なんて思いつつ電車に飛び乗って帰宅をした。


帰宅最中は妻とМINEしながら現在の状況を確認しつつ、自分自身は冷静でいるためにいつも読んでいる『腹いっぱい食べたら最強』を読み時間を潰す。


自宅の最寄り駅に到着すると俺は両家の実家に連絡を取り、これからの対応について説明した。


家に帰り着くと、小学生の雫はすでに帰宅しており、妻の指示のもと家を出る準備を済ませていた。

幼稚園児である次女の紅葉はこれから妻方の祖父母の家に遊びに行くと思い、いつも通りキャッキャウフフしている。

まだ少し余裕のある妻を気遣いつつ、荷物を車に運び家族全員で出発し、妻の実家へ子供たちを預け自分たち産婦人科を訪れ医師の診察を受けた。

医師より「もう間もなく」という言葉を受け、妻は即時入院となり出産準備となった。


俺は『帰宅してもいい』と言われたが、そのまま残り妻の側に寄り添いことを見守った。

そうして、かなりの時間が経過した日曜日に日付が変わった頃に新たな命が誕生した。


俺は新たな命に自分を越える男になって欲しいという意味も込めて、龍彦の『龍』が『リュウ』と読むので、『音』を組み合わせて『龍音』と書いて『リオン』と名付けた。


グローバルな社会に突入している今日この頃なので、海外でも呼びやすい名前ということで感じ云々よりも呼び名優先で『リオン』にした。


龍のように自由に飛び回り音のように世界に広く響き渡るような漢になって欲しい。


そうして、俺の家族に新たに龍音が加わった!!

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