ログ12 暴豚ピグザム
一色触発の雰囲気に包まれた集会所だったが、ヤツの登場で一瞬で違う雰囲気に呑まれた!
それは濃密な『死』の雰囲気だった。
集会所に最後の一頭である、あの巨大な豚が現れたのだ。
豚の口からは人であったであろうモノがぶら下がっている。
バキバキと不快な咀嚼音を鳴らしながら次の獲物を探すように、こちらを射殺すように見ている。
全員が自身の命が天秤にかけられたことを悟った。
と、同時に息をするのを忘れヤツの一挙手一投足を見逃すまいと目を凝らした。
時間にして数秒の出来事だが、俺たちにとっては数分にも数時間にも思えるほどの長さだった。
そんな最中、ほんの一瞬であったが、瞬きをしてしまった人物がいた。
その人物は驚愕した!!
なぜなら、瞬きをした一瞬でヤツが目の前にいたからだ!
『一瞬が命取り』という言葉があるが、まさにその通りであることを証明する形となった。
ほんの一瞬だ。一瞬まばたきをした。
その男は自身の身体に起こった違和感に気が付いた。
違和感の正体は自身の腹に突き刺さる牙であった。
巨大な豚の口から出ている反り返った長い牙が博正を貫いていた。
皆も博正自身も一瞬何が起こったか判っていなかった。
自身が貫かれたことを一拍遅れて理解した博正が「かひゅ」という息を漏らした。
と、同時に博正の口から大量の血が吐き出された。
豚が首をブンと振ると、壊れた玩具の様に博正は飛ばされ壁に『グチャ』と音をたててぶつかり落ちた。
更に追い討ちをかけるように博正の目前に迫る豚は泣きながら命乞いをする博正の顔をまるで感情があるかのように歪な笑みと笑い声の様な「ブヒィィィ」という叫び声をあげながら、トマトを潰すかの様に踏み潰したのだった!
博正だったものは首から上を消失させながらも、尚もビクン!ビクン!と痙攣しながら糞尿を垂れ流し、やがて糸が切れた人形の様に動かなくなった。
静寂を切り裂くように広野自治会長が叫んだ。
『暴豚ピグザムだ!!!』
それが引き金となり更に場が混沌としたのだった。
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