ログ8 召集

大型の豚の咆哮ハウルは南棟の下の方から聴こえた気がした。


俺は西棟の端にいる。

つまり距離は1番遠い。

だが、あれは小豚が殺された怒りの咆哮ハウル


この濃霧の中、いくらバケモノだからって南棟から西棟の端なんて見えてないだろう。


とすると耳か鼻だな。


豚は鼻が利く。確か地中に埋まってるトリュフを見つけられるとか。


つまり、小豚が死んだ臭いを嗅ぎ取ったのか・・・


西棟で小豚が死んだことを理解したなら、ヤツは必ず来る。


だったら、俺は急いで南棟に逃げなければ、確実にられる・・・


そう思った瞬間に南棟へ走った。


エレベーターホールに差し掛かろうかというところで、『キンコンカンコーン』と館内放送が流れた。


「住民の皆さん聞こえるか!儂は自治会長の広野誠ひろのまことだ。このマンションは豚の化け物に襲われている。女子供老人は家に鍵をかけて安全なところに隠れてくれ!そして、負傷者や戦える者は2階の『』に集まってくれ。負傷者は防災セットでケガの手当てを行う!そして戦える者たちよ!ともに豚どもを返り討ちにしてくれようぞ!残り5頭なら勝ち目はあるはずだ。1人では勝てぬとも、複数で戦えば勝てるはずじゃ。儂に!!応援を頼む。」


その放送を聴き、逃げるのをやめ2F集会所へ向かった。


念のためエレベーターとレベーター脇の西棟の階段も使わず南棟の階段から向かうことにした。


その頃、2F集会所前では自治会長の広野がバリケードを組んでいた。


「ここを拠点にすれば豚を倒せる可能性はある。何より本当に総て倒せれば儂はに戻れるかもしれん…………だが、あの『』に勝てる者などいるのだろうか………」


広野の意味深な独り言はバリケードを組む喧騒にかき消されていった・・・

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