ログ5 少女
現在、西棟7Fエレベーターホール脇の階段。
この階段を登ればミコトおばさんの家だ。
でも、さっきの豚がもし階段を登ってきていれば、真ん中の階段はかち合う可能性が高い。
万が一かち合ったら階段からすぐの家に住んでいるミコトおばさんを巻き込みかねない。
俺は逃げ出したい思いを必死に抑えて階段を登らずに西棟の端にある3本目の階段を目指し、震える足に鞭を打ち走った。
西棟の端の階段
下の様子を伺いながら豚がいなさそうなことを確認し恐る恐る降りる。
一歩一歩音を立てずに、いつ豚が出てくるかわからない恐怖に耐えながら冷汗をかきながら降りる。
5F階段
2階層降りただけだが疲れが酷い、どうやら自分の想像以上に神経をすり減らしていたようなので、5Fで息を整えることにした。
やっとの思いで5Fに着き息を整えていると違和感を感じた。
違和感の元を恐る恐る探る。
物音がしたので、耳をすまして音を拾うと、豚ではなく、かすかに泣き声のようなものが聴こえる。
細心の注意を払い泣き声の方に行くと、528号室の扉を覆い被さるように隠しながら息絶えてる傷だらけの男性がいた。
そして、その扉の隙間から少女の嗚咽混じった泣き声が聴こえた。
男性は少女の父親で、突然の豚の襲撃から少女を必死に守ったのだろう。
全身に刻まれた傷がそれを物語っている。
凄い父親だ。
俺は男性に黙祷をささげ、少女に話しかけた。
君のお父さんは立派な方だ。
命を懸けて君を守り抜いたんだ。
だが、また豚がくるかもしれない。
お父さんが守ってくれた命なんだ。
君は生きなきゃいけない。
だから、悲しいけれど扉を締めて鍵をかけてお家のどこかに隠れてなさい。
俺も恐いけど、下まで降りて必ず助けを呼んでくるから、それまで隠れててくれ。
少女の頭を優しくなでながら俺は泣きじゃくる少女に伝えた。
少女は泣きながらコクンとうなずき扉の鍵を締めた。
いい子だ・・・
少女の父親の亡骸を見ながら、そう呟いた俺は恐怖以上に今こんな状況を作り出した奴へ抑えられないくらいの怒りが湧いていることに気が付いた。
ぜってぇ許さねぇ!
そう思った直後西棟のエレベーターホールから小型の豚が顔を出した。
豚は『みぃつけた』と言っているような醜い叫び声をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます