第45話 お披露目、これがイグナイトフォーム!
お正月の三が日最終日。
俺は全ての準備を終え、満を持してお披露目をすることにした。
配信枠で待機するリスナーの数もなかなか。
刮目せよ、黒胡椒スパイスの新フォームを今お見せする!
いや、ダンジョンで使ったほうがいいんじゃないかって説もあるんだけどね。
正月は家からあまり出たくないんで……。
「どーも! ことしもよろしくぅ! スパイスだよー! 今日の新衣装お披露目は普通に自宅でーす。お正月なのにダンジョン行くやつがあるかー! ってことで!」
※『あけおめ!』『こんちゃー!』『どーもー!』『スパイスちゃんは新年もカワイイ』『新衣装やったー!』『絶対にカワイイのも分かる』
そうでしょうそうでしょう。
メタモルフォーゼにも磨きがかかり、髪型とかチークとか、色々いじれるようになってきたからね。
ファッション系のサイトを見て勉強する日々だよ。
「えー、では早速お披露目を……」
※『早い早い早いw』『溜めないのw!?』『せっかちスパイスちゃん』
「いや、溜めてもいいんだけど間が持たないくない? 雑談でもいいんだけどー」
『主ィ! 俺の準備はァ~万全だぜぇ!! 行くぞ、焼結!!』
「あっ、メタモルフォーゼが魔導書側から始まってしまったんでやっちゃうねー! うおー、メタモルフォーゼ・イグナイトスパイス!」
オレンジの炎みたいなエフェクトがスパイスを包み込む!
部屋のベッドの上に立っているんだけど、背景はいい感じでフロッピーが合成してくれている。
予算の関係で、ちょっと平べったい魔法の世界みたいな背景だけど。
※『うおおおおおお』『すげえエフェクト!』『アバター技術も進化したなあ』
このエフェクトは純粋に魔法の輝きなので、アバター技術とはちょっと違うんだけどなー。
ということで。
「じゃーん! 黒胡椒スパイス、イグナイトフォーム! どーよっ!?」
いつもより伸びた、黒とオレンジが混じったツインテール。
これが部屋の中に生じたつむじ風を受けて舞い上がる。
もちろん、オレンジのスカートも。
ベースカラーであるスパイスの白黒を残したまま、差し色で効果的にオレンジが入っております。
いやあー、いつ見てもカワイイと思うんだよねえ。
この姿のまま近所で買い物してるけどさ。
……今後は外出用に、もうちょっとシンプルな感じのガワをメタモルフォーゼで作るか。
俺が考えている間にも、コメント欄は猛烈に大盛り上がりしていた。
※『ついにキター!!』『スパイスちゃんの新フォーム!!』『魔法少女と言うかヒーローもののそれじゃない?』『魔導書が増える度に新フォームが増えるってやつ!?』
「そう、それ。多分スパイスは今後もどんどん成長していきます……! みんな応援よろしくね! で、パワーアップは仇の魔女をぶっ倒すのと連動してるので、みんなにエンタメをお届けできると思いまーす!」
コメント欄がまた、ワーッと盛り上がった。
そして、質問が飛んでくる。
※『スパイスちゃんはイグナイトフォームでどういうことができるの?』
「いい質問だね! あのね、まだスパイスはイグナイトフォーム初心者なんで、さっきのつむじ風と……これ」
指先から連続で火花が散る。
「ティンダー。発火の魔法だよー。これに、あとはウォームっていうあったかくする魔法くらいかなー」
※『日常生活魔法じゃん!』『えっ、そんな魔法で魔女と戦いを!?』『できらあ!』
「むっふっふ、スパイス、物を浮かせて回して加速する魔法だけで、チャラちゃんに手伝ってもらって魔女を一人やっつけたからね。魔法は威力じゃないの。創意工夫と下準備とハッタリ!」
『事実、主様ってばひたすらジャイアントキリングばっかりしてますからねー! オラアこの配信見てるか他の魔女ー! いつでもかかってこいやあ!』
※『うおおおフロータちゃんのドスの効いた声が!』『これは新年から痛烈な挑発!』『魔女さん見てるー!?』
リスナーまでスパイスの真似をし始めた!
これは教育に悪い配信ですねえー。
こうして新衣装をお披露目した後、この姿のまま雑談配信に移行するのだった。
お題は正月に食べたご飯の話。
ふむふむ、みんなの半分は実家、あと半分が一人暮らしか。
意外とリスナーに一人暮らし勢が多いな……。
「スパイスはねー、自炊するんだけど。今は鶏団子鍋がマイブームかなー」
※『渋いw』『自炊すごいなー』『家庭的ー』
「1人分を作るだけだとコスパが悪いから、まとめて何回分も作って、それを冷凍しとくの。んで食べる時に一回ぶんずつ解凍して……。そうそう! スープにとろみを付けておくと小分けにしやすいからね」
※『スパイスちゃんの手料理が食べたい……!』
「えーっ、おじさんでもいいのー?」
※『おじさんでもいい……おじさんでもいいんだ!』『むしろそこがいい』『スパイスちゃんがイグナイトフォームでお料理してくれるオフ会ってコト……!?』
「あー、なるほど、アリだねー! 色々揃えればそういうこともできそう! んじゃ、そのうち参加メンバーを厳選してやっちゃおうかな……!! 動画でも公開するからねー!」
うわーっとまたコメントが盛り上がった。
うんうん、みんな楽しみにしてくれていて何よりだよ。
「ということでね、みんな、これからも魔女の情報をよろしくね! 精神の魔導書、風と氷の魔導書、海の魔導書、色彩の魔導書、力の魔導書。それっぽい事件が起こってたら教えてくれるとうれしいなー。メンバー限定で、そういうの連絡できる枠が取ってあるからねー」
『さすがは主様、抜け目がない……!』
ふふふ、全ては段取りなのだ。
俺はきちんと、今後の戦いの布石も作っていくぞ。
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