第48話



「君ってこんなに話す人なんだね」


「…まぁ、今日はな」


「…今日なにかたくらんでるわけ?」


「いや?今日俺は特にやることねぇだろうな」


「なんで?こんな忙しい時に」


「買収されたのは一時的にって言っただろ。

今はこれ以上の情報流出を避けるために一応俺も見張っときたいってところだろ」


「なるほどねぇ」



ルナも用心深くなるわけか。


木田が紅に電話をしている時── 一番最初、初めて会わせてもらった時──、カフェ『樹々じゅじゅ』を"いつもの場所"で、と表現した。


ならば、紅とルナは懇意こんいにしていると思っていた。



そうじゃないのだろうか。

まぁ、僕は知らないし意見もしない。


考えたところで無駄だ。


そこで物陰に誰かがいるのがわかった。

いや、ずっとそこにいた。

知っていて声をかけなかった。



「何?立ってないでさっさと来なよ」


「…すみません立ち聞くつもりはなかったんです」


「いいよ。別に」



そこに立っていたのは、第二部隊指揮官──ひいらぎだった。


僕たちはルナの話をしていたのではない。

お互いの戦闘スタイルについて話していたのだ。


なんら後ろめたいことはない。



「帰還したあなたを見かけて。

その後から時間が経ってますからね。

そろそろ声をかけた方がいいかと」


ふと時計を見ると、確かに2時間ほど経っていた。

確かにもう装備の点検や補充などの準備が必要かもしれない。



「親切にどーも」



僕は立ち上がってズボンの埃を払った。


そうしてパキパキと音を鳴らしながら伸びをする。



「はぁ〜、今日も最高の日になるといいな」


「「………」」



何故か2人は黙り込んだが、僕はうっとりと空を見上げた。







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