第四章 蜘蛛の意図
第44話
第四章 蜘蛛の意図
帰還後、すぐに現場での報告をした。
各部隊の指揮官が走り回る中で、木田はいつから寝ていないのか疲れているように見える。
「以上、報告になります」
全世界にいた協力者は死者こそ多くなかったが、無事な者はほとんどいない。
何よりこれから新しく人員を配置するとなると、全世界分は厳しいだろう。
木田が頭を抱える理由もわかる。
「
「はい」
「第一部隊にはこれから3時間休憩を取らせる。
お前もその間に休め」
「……了解」
正直不服ではあるが仕方がない。
僕と入れ違いで
彼は何があっても定時に帰るし定時にくる。
そういう約束で後継になったらしい。
このクソ忙しい中でもそれは変わらないらしかった。
僕はそれに探りを入れない。
中には首を突っ込みたくなる人もいるようだが、最高司令官が決めたことは絶対だ。
秋信ものらりくらりかわすらしい。
いつも穏やかな笑顔を浮かべていて、表情も腹の中も読めない彼らしいと言えば彼らしいが。
僕はスマホを手に持つと、第一部隊に連絡を入れた。
「第一部隊、これから3時間睡眠をとるように。
時間間違えるなよ」
『了解』
仮眠室は今人で溢れかえっているだろう。
僕はシャワーをさっさと浴びて、外を目指して歩き始める。
ここに着いて早々に紅はどこかへふらりと行ってしまった。
彼は木田と秋信の言うことしか聞かないだろう。
僕も報告を遅らせることにはいかなかったので、引き止めることができなかった。
残念だ。
外はクソ暑かった。
真夏の日差しが直撃し続ければ熱中症になる。
日陰を探して辺りを見渡すと、建物の裏の方に良さそうな影があった。
そこに行って休もう。
そう思って建物の裏に行くと。
「あ。紅」
「………」
タバコをふかす紅がいた。
今日も今日とてベビースモーカーである。
辺りにタバコの匂いが濃く残っていた。
すでに何本か吸っていそうだ。
僕はその
「…今日は静かだな」
僕は視線を紅に向けた。
それからはぁ…とため息をつく。
「さぁ、なんでだろうね」
「へぇ…」
僕から言えることは何もない。
休憩です、3時間寝ますなんて言えもしない。
紅は一時的に買収されているだけで、ルナの隊員ではないのだから。
紅は興味なさそうに、またいつもの無表情で無気力な瞳をしている。
あの時、なんで紅が笑ったのかはわからない。
けれど…。
戦場であの笑みが見れたらさぞ楽しかったに違いないのになと残念に思う。
戦闘中の紅はいつもの態度で、顔で、瞳で。
一度もそれを崩さない。
それはきっとどんな
座った状態で片膝を立てる。
ナイフを右手に持つ。
そのまま目を閉じた。
いまだ3日間の戦闘による興奮で眠れそうにない。
しかし目を閉じているだけでも…。
まぁ、睡眠をとる努力をしたと思ってもらえるだろう。
そんな僕のことを知ってか知らずか、紅は僕に話しかける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます