第35話
紅はかったるそうにタバコをふかしていた。
僕は警戒を緩めずににこりと微笑みかける。
このタイミングでここに現れるのだとしたら。
敵か。
味方か?
どっちだ。
紅はゆっくりと口を開いた。
「…困ってるらしいな」
「…そうでもないよ。何言ってるんだか」
「そうか?いつもなら
「忙しいのは認めるよ。
でも困ってはいないかな」
腹の探り合い。
そんな感じの会話だ。
僕から何を聞き出したい?
なんの目的で来たんだ。
僕は隙を見せないよう、警戒を解くフリをした。
からん、からんとナイフで遊ぶ。
「君こそ、何しにここに?」
「お前を見かけたから来た。それだけだ」
「またまた〜。
ずーっと僕のこと避けてたくせに?」
「避けてない」
「嘘だぁ!」
「それより」
紅は僕が投げ捨てたスマホを指さす。
「電話、してただろ。
出ろよ。"忙しい"んだろ」
僕はほんの少し目を細めた。
これはブラフか?
…いや。
僕は素直にスマホを拾った。
"やはり"紅は動かない。
『……なり、…さん、
…どうしました』
電話はまだ繋がっていた。
僕はふっと短く息を吐き出して、報告する。
「…
『……』
秋信は何か考えているらしく、3秒ほど黙った。
そして。
『代われますか?』
「…了解」
僕は紅にスマホを向けた。
紅は僕が誰と電話していたのかわかっていたのだろう。
いつもの無表情で、無気力な瞳で僕からスマホを受け取った。
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