第34話



『"先に"現場に到着しましたが、目標の1人はここにはいませんでした。誤報です。

おそらく私の方は"そちらに"間に合わないので、正確な情報が出るまで"そのまま待機"で』



僕は笑った。


やはりこの人は頭がいい。

それも僕なんかでは計り知れないくらいに。


僕がここで待機するのを知っていて、わざと誤報の場所へ行ったのだ。


誤報か本当か2分の1なら。

両方潰したほうが効率がいい。


だから秋信は、わざと誤報の場所へ行ったのだ。


僕は待機指示に対して返事を返した。



「了解」



隊員が不安げな、心配げな表情を浮かべて僕をじっと見つめていた。

僕は指示を出す。



「さっきのは誤報。待機指示」


『…っ!了解』



隊員たちの顔に安堵が浮かんだ。


と、そこで突然顔に影がさした。


ここは人気のない路地。

さらに僕がこの人物の気配を1ミリもわからなかったなんて。



普通じゃない。



スマホを投げ捨てた。

すぐ警戒しバッと後方に飛びずさり、ナイフを構える。



ところが、突然僕を覗き込んだその影は。




「あ…。べに





紅だった。








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