第24話

「こんにちは。百鬼きなりさん、酒匂しゅこうさん」



と、そこで鮮烈な赤が視界に映った。

目立つその髪の赤はゆるりと癖があり、その瞳は何もかも見えていると錯覚させるような黒。


穏やかな笑みを浮かべて、彼──秋信あきのがやってきた。


彼は木田の次にルナ最高司令官になる。

つまりは後継だ。



「秋信」



べにの声が低く響く。

大きな声を出していないのに、紅の声はどこにいてもはっきり聞こえる。



「遅い」


「すみません。数が足りないだろうと思ってこちらに来てもらったんですが…。

いらなかったみたいですね」



秋信はちらりと前方にある今回の敵本拠地を見て笑った。

紅、情報関係と言いながら援護の仕事も来てたんじゃん。



ん?

はたー!

これはチャンスだ!



「ねね、紅。何もしてなくて暇だったんでしょ?

その情報取引終わったら僕とろう!」



紅は吸っていたタバコの煙をふぅ、と僕に吹きかけてきた。

僕はそれに首を傾げる。



「けっむ…。なに?」


「ガキのお守りなんてごめんだね」


「あー!バカにしたな!?」


「バカをバカにして何が悪い」


「バカにバカって言ったら、自覚してどんどんみがき上げちゃうんだから!」


「……俺はそんな意味で言ってない」



ギャーギャー騒ぐ(僕だけ)に、秋信がくすりと笑った。

僕はなおも喚き立てる。

けれど紅はどこ吹く風で、視線さえこちらに向けてはくれない。



「似たもの同士ですね」


「ちげぇよ」


「違うよ!僕もっと表情筋働けてるもん!」


「いえ…。

あなたも大変ですね、"酒匂しゅこうさん"」


「…………」



紅はまた無表情にふっとタバコの煙を吐いた。

そして幸架をちらりと見る。



「…お前、"ソレ"やめろよ。気色悪りぃ」



僕は首を傾げた。

秋信の"それ"とは。

まぁ今は別にいいのだそんなことは。


それより!と僕は話をしようと口を開いた。

けれど、秋信の方が話し始めるのは早かった。



「あなたは苦労性ですね。

さて、こちらの情報照らし合わせてみますか」



そう言って情報担当じゃない僕には見せられない、聞かせられない話を2人が始めた。


僕は早々にその場を離れて2人に恨みの籠った視線を向ける。



ぜったい僕は紅に振り向いてもらうんだから。



どうしたら紅はその気になってくるかな。

技量が足りない?

ならさっきそう言ってくれればよかっただけじゃん。


基礎がなってないとは言われたけど。

直せとは、言われてない。

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