第3.5話 小鳥遊つくねの泣き所
私、
相も変わらず部長は野球部の手伝いに行っているらしく、今は一年生の私たち三人だけ。
私がスマホをいじる横で、
「で、ですから、これはさっきの公式で…」
「いやだから、それは分かったんだよ?分かったんだけど。なんでその公式を使おうって思えるのかな?」
「なんでって…見たら分かりません…か…?」
「それで分かったら苦労してないよ~」
悪戦苦闘している二人をぼんやり眺めていると、不意に部室の扉がゆっくりと開いた。
入ってきたのは、素朴な印象の女子生徒。
確か隣のクラスで見た気がする。
彼女は天桃にハッキリと視線を合わせてから、その口を開いた。
「あ、あの…天桃さんにご相談があって」
「え、私名指し?そんな有名人になってたかな?」
「まあ、学年で言えば名が知れてる方じゃないか」
顔良しスタイル良し性格良しだからな。
世間に知られていないダメな所は多々あるが。
入ってきた彼女は視線を流して文月の服装を見ると、申し訳なさそうに話す。
「あの…あんまり男子には聞かれたくない内容なので…」
「あ、ほんと?じゃあ文月くん」
「あ、はい。部室の外にいますね。終わったら教えてください」
「はいはーい」
文月が廊下に出て扉がパタンと閉まる。
それと同時に、彼女はソファに腰を下ろして天桃と私に向き合った。
「さっき呼んでたから知ってると思うけど、私は天桃ね!こっちはつくねちゃん」
「あ、お願いします…私は
「で、ご相談って何かな?」
早瀬は何度か口元まで出た言葉を飲み込んだ後、観念したように口を開いた。
「その…私、ちょっと身体に自信がなくて」
「身体?」
「は、はい…その…言ってしまえば…ここです」
彼女は自身の胸を手で軽く抑える。
ふむ。
自信がないとな。
目の前にそれ以下のサイズの私がいるのにか?
私の殺気を感じてか、早瀬は決して目を合わせずに、下を向いたまま語りだす。
「私の友達結構大きい人が多くて…夏になったら海とか行くことになるから、それまでに何とかできないかなって」
「それで、私に聞きに来たんだ」
「は、はい…何かこれしたらいいんじゃ、みたいなことってあったりしませんか?」
天桃は少し考える素振りを見せると、指をピンと立てた。
「そうだね~…牛乳は昔からよく飲んでたかなぁ」
「私もよく飲むな」
「…」
「…」
「…」
「…あ!私結構いっぱい寝るタイプだから!それはあるかも!」
「私も大体七、八時間は寝てるな」
「……」
「……」
「……」
「じゃ、じゃあ!私はやったことないんだけど、バストアップの筋トレみたいなのは――」
「あれ大して変わんなかったぞ」
「………」
「………」
「………」
天桃と早瀬が、同情と憐れみの目で私を見つめてくる。
「…つ、つくねさんも、まだ成長する可能性はありますから…」
「…つくねちゃん、泣いていいんだよ」
「…うるせえよ…」
● ● ●
最新話までお読みいただきありがとうございます!
少しでも「おもしろい」「かわいいな」など思っていただけたら、★評価していただけるとありがたいです。
励みになります!
内気で女子が苦手だけど、肉食系美少女やその友達に好かれて迫られるラブコメ。 カカオオレ @02kare
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。内気で女子が苦手だけど、肉食系美少女やその友達に好かれて迫られるラブコメ。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます