第1話ー②
「はぁ~、つくねちゃんにしかこういう話してなかったのにぃー」
天桃さんはソファにぐだっともたれて、まだ聞かれたことを悔やんでいるみたいだ。
小鳥遊さんが、呆れ笑顔で彼女に励ましのような言葉をかける。
「まあ、いつもより大分マシな内容だっただけよかっただろ」
「うーん…それはそうだけど…」
「…だ、大分マシ…?」
アレで?
この人普段どんな話してるんだ…。
引きつった顔でうだうだしている天桃さんを見つめる。
僕の知る限りでは気さくな性格で男女共にすごく人気で、身長も高くてスタイルもいい。
体育は男女別なことが多いのでよく知らないが、運動も滅茶苦茶できるみたいだ。
前、女子バスケ部の顧問の先生が泣いて入部を懇願していたのを見た。
顔も整ってるし、正に才色兼備って感じの人だ。
さっき、中々にでかい綻びが見えた気がするけど。
そして、
この人も顔は整ってるけど、男子に対して全然心を開く様子がないので天桃さんほど男子の間で話題には上がらない。
初対面から急にタメ口と呼び捨てで話しかけられて、僕は正直ちょっと怖い。
そんな二人と微妙に距離を取りながら、一息つこうと一人掛けの椅子に座った所で、ドアノブがガチャリと音を立てた。
部室の扉が勢いよく開いて、爽やかな印象の男子生徒がずかずかと部室へ入り込んでくる。
「おーっす。お!みんないるんだ」
「あ、部長、おつかれさまです」
部長、
部長は慌ただしく部屋の隅に荷物を放り投げると、僕の肩に手をのせて言った。
「ごめん、俺野球部の手伝いに行ってくるから。二人は、困ったことあったら文月に聞いてくれ」
「はーい」
「はい」
「それじゃ、文月。頼んだぞー」
それだけ告げると、部長は足早に部室を走り去っていった。
相変わらず忙しない人だ。
足音が聞こえなくなったくらいのところで、小鳥遊さんが口を開く。
「この部活って、どんくらい人来んの?」
「え、んー…まあ、日によりますね…二、三人くることもあれば、誰も来ない日も結構ありますし」
「へー。じゃあ、来ない日は適当に時間潰すだけで終わ――」
小鳥遊さんの言葉に被るように、扉が大きく唸るように音を上げた。
部長と入れ替わるように入ってきたのは、以前も相談に来た覚えのある女子生徒。
噂をすればというやつだ。
彼女は僕たち三人の顔を順番に見た後、ゆっくりと話し出した。
「あの~…れ、恋愛相談がしたくて来たんですけど~…」
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