女性恐怖症の克服を口実に、脳内ピンク美少女たちに囲まれる日常の話。
カカオオレ
第1話
五月。
担任の間の抜けた一声とチャイムで、今日の放課が告げられる。
チャイムから二分も経たずに校舎を包み始めた吹奏楽の音に聞き入りながら、僕は一人で廊下を歩いていた。
好きなものは、美味しいご飯ともふもふしてるもの。
苦手なものは…歳の近い女子。
女子が苦手といっても、具体的にどこが嫌とかがあるわけじゃない。
ただ、本能的に女子が嫌い、というか怖いだけ。
そんな僕が今向かっているのは、自分が所属している部活「お悩み相談部」の部室。
名前こそふざけた感じだが、一応仕事の内容はちゃんとしている。
一言でいうと、部室に来た人の頼みや相談を受けるという部活動だ。
これだけ聞くと僕が人の役に立ちたくて入ってるみたいだが、別にそういうわけじゃない。
部員集め中の部長の勢いに押されて、断れずに入ることになっただけだ。
部室へ行く途中で、スマホがメッセージを受け取って、微かな揺れとともに画面を点灯させる。
部長からだ。
どうやら、今日うちの部活に新入部員が来ているらしい。
僕を除いてこの部創立以来初めての部員の加入だからか、部長が滅茶苦茶浮かれたスタンプを送ってきている。
新入部員ってどんな人だろう。
女子じゃなければいいけどな…。
いつの間にか着いていた部室の扉に近づいて、そろ~っと扉を開ける。
中には、ソファに座った二人の女子の姿。
その片方から発されるのは、毎日教室で聞いているよく通る声。
「やっぱ女の子はお尻より胸だと思うんだよ。つくねちゃんも思わない?」
「……」
クラスで人気の人…確か、
僕のイメージでは、純粋で人当たりが良いという印象の人。
彼女が、うちの部室でめちゃくちゃしょうもない話を繰り広げていた。
いつもの純粋無垢なイメージからはあまりにかけ離れている。
つくねちゃんと呼ばれた小柄な人は、僕の隣の席の
彼女だけ僕に気づいた様子で、呆れたような目線で僕と
少しして、彼女の視線に気づいた
気まずい。
僕はこの修羅場から抜け出そうと、苦笑いを浮かべながら扉をゆっくりと閉める。
「あ…し、失礼しまし――」
「ちょちょちょちょっと待って!文月くん!聞いてたよね!?今!」
「い、いや!ちょ、ちが!」
突然思いっきり腕を掴まれて、情けない声を上げながら部室に引きずり込まれる。
生まれて初めて、肉食獣に襲われる動物の気持ちが分かった気がした。
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