第4話両家の挨拶

 5月21日の18時を過ぎた頃に、インターフォンが鳴り、父親が玄関先へと駆けて、私も追いかけた。

 父親が玄関扉を開けるとどことなく母親と似た雰囲気を纏わせる女性が佇んでいた。

「浩治さん、こんばんは。伺うのが遅れてごめんなさい。隣に居るのが、怜華さん?こんばんは、貴女のことは浩治さんから聴いてるわ。上がっても良いかしら?」

「こんばんは……尚美さん、お待ちしていました。さぁさぁ、どうぞ」

「は、初めまして……」

 私は緊張しながら、口内が乾いたままに挨拶をして頭を下げた。

 再婚相手の女性が父親に案内され、リビングへと歩いているのを脚が上手く動かずに見送り、佇むしかなかった私。

「お邪魔します」

 私の前を通り過ぎ様に歳上に見える金髪の女性がぽつりと呟き、再婚相手を追いかけた。

「あ、あれ……?」

 私は驚き、首を傾げ呟いた。

「怜華ぁー、早く来ぉい!」

「うーん、今行くぅ!」

 リビングから父親に大声で呼ばれ、慌ててリビングに戻る私だった。


「怜華さん、私が本日こちらに伺ったのは貴女のお父様である浩治さんと再婚することに至ってのご挨拶をと。私と浩治さんの話し合いで決まり、怜華さんの想いも汲まずに再婚したいと勝手に進めてごめんなさい」

「尚美さん……」

 私に再婚相手は頭を下げ、謝意を告げた。

 彼女に父親が声を震わせ、名前を呟いた。

 正面の向かい合う金髪の女性は、下唇を噛み締め、一言も言葉を発さないでいる。

「あの……どうか、頭を上げてください。えっと……私はお父さんが、ナオミ……さんでしたか?お父さんがあなたと再婚して幸せと感じて、生きようと思えるなら……私の想いがどうであれ、良いんです……なので、謝らないでください。いっ、以上……です」

「れ、怜華さん……ごめんなさい。私は……怜華さんになんてことを……ほんとにごめんなさい」

 再婚相手の女性は、涙ぐみながら謝ってきた。


 再婚相手の女性が泣き止み、落ち着きを取り戻してから、挨拶を始めた。

「僕は尚美さんと再婚をする、山下浩治といいます。これから仲良くしてくれると嬉しいです……夏涼音さん。隣が娘の——」

「山下怜華です……高一です、これから宜しくお願いします」

「私たちもこれから宜しくお願いします。浩治さんと再婚する内海尚美です。気軽にお母さんって呼んでくれると嬉しいわ、怜華さん」

「内海夏涼音といいます。大学に通ってます……これから宜しくお願いします。仲良くしてくださると嬉しいです」

「あっ……!コンビニのお姉さん……」

「あのときの……桜紅高校の!?」

「会ったことがあったのか、怜華っ?」

「夏涼音も怜華さんと顔見知りなのっ!?」

 四人はそれぞれ顔を見合わせ、驚いた。

 私は内海夏涼音の発言にどこか恐怖心を覚えた。

 確かに、あのコンビニへは制服で入店した。

 いち客の通う高校を把握して、覚えてるなんておかしい。

 内海夏涼音かのじょが、怪しく見えた。


 親たちが自身の娘に追及を始めた。


 この後、内海母娘は山下家に泊まることになった。

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コンビニ店員のお姉さんが姉になっちゃった 木場篤彦 @suu_204kiba

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