愛味

相山 奇々

第1話

「相良 絵美」

貴方がいればいいの、

傍にいてくれればそれで。

重たい女だって思われるよね。


重たいぐらいがちょうどいいよ。

それが貴女なんだから。

そうやっていつも笑ってくれたよね。


ごめんね。

もう聞こえないよね。

今までありがとう。だいすきだよ。

愛してる。


------------------------------

肌寒い季節になってきました。

右手に持つ、スターバックスのカフェオレのホットが体の芯まで温めてくれます。

子どもの頃は、大人はなんであんな苦いものをわざわざお金出して飲むんだと疑問に思っていたけれど、不思議とおやつの時間にいつも母親がカフェオレを注いでくれたおかげもあってか、

いつの間にか呑めるようになっていました。

初めは砂糖をたらふくいれて、牛乳でひたひたにして飲んでいたのも考えられないぐらい、この苦さが美味しいと思うまで味覚が大人びたのも、母親の愛情がカフェオレに注がれていたからなのかもしれません。


愛情たっぷりのカフェオレ。

母親はすぐに他界してしまいましたが、

毎日カフェオレを飲むことで母親との何気ない素敵な思い出が蘇ります。


「た、助けて、、、絵美」


ふふふっ、ごめんなさい。

思い出し笑いしてしまいました。

私は、思い出に蓋をするように、今日

カフェオレを味わいます。


そうそう、彼と出会ったのもこのスターバックスでした。


彼は私の彼氏です。「豊 真」

ゆたか まこと。そう読みます。

まこと ゆたか。裏返しても名前になるなんて、リバーシブルで素敵!などとはじめて名前を聞いた時思いました。


真と恋人になったのは3ヶ月前。

私が彼に一目惚れしたのがきっかけでした。

一目みただけで恋に落ちるなんて、恋愛ドラマや少女漫画が創り出した、造語にすぎないと馬鹿にしていましたが、真にであったことでそれが事実無根なことだと気づかされました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛味 相山 奇々 @boxs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る