第5話 召喚系配信者、魔王プレイを楽しむ(白目)
コメントで流れて来た《戦ってみたい》と言う言葉に俺は天啓を得た。
これは配信者として面白い企画だろうと思い、SNSで1パーティ募集する事に。
条件としてはライブに出ても大丈夫と言う人とパーティメンバーとその構成、各々のレベルを記載。
「いっぱい参加したいって人が来てくれると良いな」
そう思い翌日、確認すると見るのも面倒な程に来ていた。
初めて万を越えたリプ欄に驚愕しつつ、仲間を召喚して整理に手伝って貰った。
今回は初めてなので抽選方式にはせず、提示されたレベルが高いメンバーを選んだ。
戦闘エリアはこちらで用意するとして、その場所への移動はマメに手伝って貰おう。
この人達を相手するのは誰が良いだろうか?
「ん?」
企画について考えていると、脳内に強烈なアラームが鳴り響く。
これは俺の召喚世界から干渉して来ている証拠である。
世界を越えての干渉を可能にするのは俺の仲間でも片手で数えられる程しかいない。
誰かは分かる。
そろそろ発情期も収まり活躍したい欲望があるのだろう。
毎日のようにアラームを鳴らされても困るので、今回はその子に相手して貰おう。
ただ不安な点がある。
「手加減、出来るかな」
対戦ライブを始める日。
俺は安全圏で豪華なソファーに座りながら実況しつつ観戦する。
挑戦者は6人パーティ、男女比1:1のバランスの良いパーティだ。
全員レベル99とカンストしている。
役割的に、前衛のアタッカーが2人、タンク、バッファー、ヒーラー、後衛のアタッカーだろう。
レベルカンストと言う事できちんと連携は出来るだろうし、一般的に見たら強い相手だ。
《俺でも知ってる人達だ》
《最近あんまり活躍を目にしないけど、生きてか》
《どんな戦いっぷりを見せてくれるかな》
《久遠ちゃんの力も気になるところ》
《ようやく召喚獣の強さが分かりそう》
《嫌な予感しかしない》
《応援しているパーティの一つだから、無様な姿は見たくないぜ》
《南無阿弥陀仏》
コメントでの盛り上がりは上々か。
「今日は突然の企画発表と募集に参加くださりありがとうございます。沢山の人がやりたいと言ってくれて、嬉しかったよ。さて、今回はこちら側で選抜したパーティに今回は私の仲間でナンバーツーの方と対戦して貰います!」
ナンバーツーだが、召喚獣の総指揮や統括をしているのはこの子だ。
「召喚、ルミナ!」
《え? ナンバー2?》
《なるほど。先日の天使と悪魔よりも強いのね。なるほど》
《被害者のファンは今すぐ視聴を止めろ!》
《もう滅茶苦茶だよ。挑戦者の資格を持つ人間いるの?》
「皆心配し過ぎだよ。流石に⋯⋯大丈夫」
《目が泳いでる》
召喚陣から姿を現した人型の召喚獣はサラサラと煌めく長い藍色の髪を靡かせながら、ヒラヒラと舞い降りる。
「世十が一人、
ルミナは鋭い目付きで琥珀色の瞳をギロリと挑戦者達に向けた後に、冷酷な雰囲気を吹き飛ばすような柔らかい笑みを浮かべ俺に抱き着く。
「
「お、そうだな」
ルミナは満足するまで甘えると、挑戦者達を一瞥する。
なお、未だに抱きついたままだ。
背中に広がるムニムニとした感触は⋯⋯久遠じゃなきゃ鼻血を出している。
「私はルミナ。玖音の召喚獣初期メンバー。種族は臨界龍。手加減してやるから本気でかかってこい。無様を我が主の前で晒すなよ?」
作り笑みの裏に張り付く脅迫に近い殺気を無視して、俺は観戦席へ戻った。
戦場に出た両者は互いに距離を取って、戦闘開始の合図を待つ。
欠伸をするルミナ。ジュースを飲む俺。眠そうなマメ。
戦場を駆け抜ける緊張感は挑戦者に冷や汗を流させる。
《中々にえっちい格好だな》
《正直羨ましい》
《どうやったらルミナさんを貰えますか?》
《僕の嫁にください!》
ルミナの容姿に早速惹かれ始める人が続出する。
青と赤の二本の角、赤紫と青紫の翼、紫の尻尾があっても女優顔負けのルックスに惹かれるらしい。
「それでは⋯⋯戦闘開始!」
俺の合図に挑戦者の前衛3人が前進する。ほぼ同時にバフを乗せ、常時体力回復の魔法も掛けていた。
後衛アタッカーのメイジは強力な魔法の準備も始めている。
相手は一人、守りは捨て攻めの姿勢だ。
武器を手にしていないルミナを3方向で挟む動きをしている。
「迷いのない動き。ルミナはどう反応するのか! 実況の久遠と解説のマメです。楽しんでください!」
「わん!」
《解説役が不在だと!》
《誰か! 犬語が分かるスキルの持ち主いませんか!》
《ルミナさんの詳細をください!》
《どっちも頑張れ!》
「ルミナの詳細をくださいと言うコメントがありましたのでザックリと解説をします」
ルミナが一切動かない事を警戒して挑戦者の動きが暫く無さそうなので、解説する事にした。
「まず服ですが下乳の見える格好をしております。布面積よりも肌面積の方が多い格好をしていますが、肉体がダイヤモンドよりも数万倍は硬いので防御力に問題はありません。どえらい格好は私を誘惑するために同期に勧められた服装だそうです」
《あ、そんな詳細話すんだ》
「ショートパンツとこれまた布面積の少ない中、太ももに装着している足ベルト。そこに付いているケースには武器が入っています」
蓋付きのケースに向けて指を向ける。
《投げナイフなのかな?》
《投げナイフにしてはシンプル過ぎると言うか、武器が入っている見た目には見えない。そもそも蓋を付けたら取り出す時隙が出来るだろ》
《強さの詳細は?》
《ふむ。個人的には和服が好み》
《参考までにバストのサイズは?》
「そろそろ動きがありそうなので強さは解説のマメに頼みまして、バストのサイズは仲間のサキュバスからメロンとリンゴの間辺りらしいです⋯⋯この情報流す必要無かったな」
退屈過ぎて普通に語ってしまった。
戦闘に動きがあり、魔法の準備が完了したのと同時に前衛3人が動いた。
魔法を当てるために隙を作りたいのだろう。
「ルミナは魔法に当たるつもりで棒立ちしていたので、これは悪手と言えますが挑戦者は分からないので下手とは言えませんね」
《さてさて結果は》
《お。ケースを開けた》
《中身空っぽ?》
《何が入ってたの?》
ケースの中には空気が入っていた。
「わん!」
マメの鳴き声と影の矢印で意識を強制的に向けさせられたのはルミナの手。
そこにも何も無いように見える。
しかし、仲間の俺達には微かに見える『特別な空気』がある。
ルミナは前衛が肉薄するよりも速く、空気を掴んだ。
刹那、閃光が走り抜け前衛を後衛よりも後ろに吹き飛ばした。たったの一撃で前衛崩壊。
ルミナの手には薙刀が握られていた。
《ふぇ?》
《いつの間に武器を持った?》
《一瞬過ぎて分からん》
《大盾持ちまであんなにあっさりと吹き飛ぶの?》
俺の心配は現実の物となりそうだ。
手加減はしているが、それでも力の差があり過ぎた。
あ、胃がキリキリして来た。
「わんわん! わわん!」
マメが必死に解説をしてくれている。
可愛い!
《ごめん分かんない》
「わうぅ」
悲しそうなマメ。このコメ主は許さん。
「訳します。ルミナはスキル『物質変化』を持っております。このスキルによって気体、液体、個体を自在に操れます。故に常に武器を気体にしてケースにしまっているのです」
重量関係無く大量の武器を所持する事が可能と言うチートスキルだ。
もちろん、このスキルは使用者本人にも適応する。
戦闘では魔法が放たれていた。
後衛アタッカーは前衛が吹き飛んでも冷静だ。流石はレベルカンストパーティ。
《上級魔法の豪炎濁流だ!》
《一人で上級魔法か。さすがレベルカンスト》
《町一つを炎の海に変えられる魔法⋯⋯》
《傷は付けられる!》
魔法に対して一切の抵抗をせずに受けるルミナ。
《命中!》
《これは良い感じじゃないか!》
《いけるか?》
《フラグ建築士が多い!》
魔法が消えるとそこには、無傷のルミナが仁王立ちしていた。
「わん!」
「訳します。ルミナは物理攻撃無効、魔法攻撃無効を所持しております。これらのスキルの上位スキルによる攻撃なら物理でも魔法でも通ります」
《そっかそっか。無効系スキルか。勝負にならんやん》
《上位スキルってそれこそユニークスキル必須じゃないか?》
《最上位のスキルじゃないの? 違うの? 俺が無知なだけ? 無効の上?》
《なんだこれ》
やはり、相手を変えるべきだったか。
これ以上は挑戦者が可哀想なので中断し、代わりにマメと戦って貰った。
マメなら攻撃は通る。当たれば。
影の自由性を活かした動きでマメが圧勝したのは言うまでもない。
参加賞として300階層以上で手に入るアイテムをプレゼントしておいた。
心の傷が、治りますように。
久しぶりの活躍でルンルンと踊っているルミナを横目で見ながら、少し思考する。
俺達は強さを経験値で表している。召喚獣はレベルカンストしたら進化してレベルが初期化されるから、強さの指標としてあくまで憶測レベルで使っている。
戦闘力のようなものだ。
人間は種族的限界値が低く、カンストを1回迎えるとレベルが上がらない。
進化には特定のアイテムが必要となるが、使った場合は人間を辞める事になるし、世間にまだ知られていない。
さて、強さの指標として持ち出した経験値、ルミナの場合はXP7500万。実はこれはナナエルとサズンと一緒。
だがスキル、戦闘技術やセンスでルミナの方が強い。
臨界龍としてのレベルは75となる。
マメは深淵犬レベル30。XP3000万だ。
さらに俺達はモンスターを小物級、人間級、大物級、怪物級、災害級、天災級、神話級、異界級と定義し、ルミナ達は神話級に位置する。
人間級はレベルもスキルも無い人間を基準としている。
そして人間のレベル99のXPは99万だ。あくまで俺達が考え定義しているだけで正しい訳じゃない。
それでも一般的にレベル99の人間は核兵器レベルと考えられている。
まぁ、あれだ。
結論は一つ。
「相手、間違えたな」
《間違い過ぎでは?》
《マメってあんなに強かったんだね。手も足も出て無かったじゃん》
《可愛らしく鳴いて尻尾をフリフリしていたマスコット的ポジションのマメちゃん⋯⋯あんたクッソ強いのね》
《マメなら勝てると思ってた数分前の自分を笑いたい》
《とりあえず戦力がえぐいのは分かった。あれ? ナンバーツーって言ってたっけ?》
《魔王と言っても過言じゃない気がする》
《普通に魔王だろ。最初の切り忘れの巨人ってどんくらいの強さだ?》
《久遠ちゃん一人でダンジョンクリア出来る説》
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