第9話 心が冷たくなる瞬間

自分が時々、冷たい人間だと感じる瞬間がある。周りの人が楽しそうに笑っている時に、どうしても心が温まらない時があったり、誰かが困っているのを見ても、何も感じないような気がしてしまう時がある。そんな時、自分の心がまるで氷のように冷たくなっているようで、不安になる。


この「冷たさ」は、意識して生まれるものではない。むしろ、どうして自分がそう感じてしまうのか、自分でもわからない。普段は繊細で、少しのことで心が揺れる自分が、突然何も感じなくなる瞬間がある。まるで感情が一時的に停止してしまったかのように、無感覚になる。


この冷たさを感じる時、自分が他人を傷つけているのではないかという恐れが頭をよぎる。誰かに冷たい態度をとってしまったら、その相手がどれだけ傷つくだろうか、と考えると、その恐怖がますます自分を冷たくしてしまう。結局、自分を守ろうとして、さらに距離を置いてしまう。そうして、自分が自分を傷つけているような気がして、無力感に襲われる。


でも、心が冷たくなるのは、自分が意図してそうしているわけではない。もしかしたら、心が過剰な刺激に反応しすぎて、疲れ果ててしまった時に、自分を守るために感情を閉じているのかもしれない。少しでも自分が壊れてしまわないように、無意識のうちにブロックをかけているのだと思うと、それが悪いことだとは思えなくなる。


心が冷たくなっている時は、無理に温かくしようとしないようにしている。たとえその冷たさが他人から見てどう映るとしても、無理に変えようとすると、もっと自分が壊れてしまいそうだからだ。それよりも、心が冷たくなっている時は、自分に少し時間を与えて、温まるのを待つことにしている。


心が凍りついた時も、やがてまた温かさを感じる瞬間が戻ってくる。小さな喜びや、ふとした優しさに心が触れた時、少しずつ解けていく。その変化に気づけるように、冷たい自分も含めて、少しずつ受け入れていきたい。心が冷たくなった時には、それが自分にとって必要な時間なのだと思って、焦らず待ってみようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る