第2話 敏感すぎる心

日常の中で、気にしなくていいような些細なことが、なぜかいつも私の心に引っかかる。電車の中で隣の人がカバンを置く音、通りすがりの人がぼそっとつぶやいた言葉、遠くで鳴る救急車のサイレン。それらが、頭の中で何度もリピートされる。多くの人は、気に留めないような音や声なのに、私にとってはまるで全てが重要なメッセージのように響いてしまう。


「気にしすぎだよ」と言われることもあるし、自分でもそう思う時がある。それでも、音や声が耳に入ると、それを無視するのが難しい。まるで、感覚が過敏に反応してしまうかのように、一度受け取ってしまった情報を頭の中で何度も繰り返してしまうのだ。気にしないようにしようと努力しても、なかなかうまくいかない。


敏感であることは、時にしんどい。それは、心が常に緊張している状態でもあるからだ。ちょっとした音や言葉が、私の心を揺さぶり、平穏な気持ちをかき乱してしまう。静かな環境に身を置いても、すぐにまた何かが心の中を波立たせる。


でも、敏感であることが全て悪いわけではないと思いたい。たしかに、気疲れすることも多いけれど、その分、小さな変化や優しさに気づくことができる時もある。たとえば、道端の花が風に揺れる音や、カフェで流れる控えめなジャズのメロディー。そうした些細な美しさに気づくことで、ほんの少し心が救われる瞬間がある。


だからこそ、敏感な心とどう付き合っていくかが、私にとっての課題なのだと思う。すべての音や言葉に反応してしまう自分を責めるのではなく、それをどう受け入れていくか。うまくできる日は少ないけれど、それでも一つずつ、試しながら進んでいけたらと思っている。

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