014:獰猛なる猪の魔物
「うん、結構歯ごたえがあって……中々いけるな!」
「……脂身が少ない分、肉質がしっかりしているな……新鮮だが、少し臭みがあるのが難点か」
焚火を囲んで焼いた肉を齧る。
骨についたそれをかみちぎって咀嚼すれば中々に野性的な味がした。
アードルングの言うように脂身は少なく、筋肉質な肉で。
少し臭みはあったが、料理次第ではもっと美味くなる気がした。
今回は単純に塩で焼いただけであるが、もしも次があるのなら鍋にでもして……。
「……何か考えているな。まさか、次の飯の算段か?」
「え、何で分かったんだ?」
「……お前は表情に出やすい。交渉の時は気をつけろ」
「あぁ、なるほどな……うん、うめぇ」
肉を頬張りながら感想を言う。
塩だけと言うシンプルな調理法ではあるが。
冒険者は塩さえあれば生きていけるというのが師匠の考えだった。
俺もそれには同意であり、塩を掛けておけば大抵のものは食える。
塩こそが人類最大の発見であり、これこそが人の体が求める究極の調味料なのだ。
俺は塩と肉となってくれたレッド・ファングに感謝する。
そうして、がつがつと食べていきあっという間に最後の一つを平らげた。
腹を摩りながら満腹である事を呟く。
アードルングを見れば、彼女も自分の分を平らげていた。
残った骨を焚火の中に放り込んで、彼女は解体して換金できる部分は革や葉で包んでいた。
「……にしても、そのでっかい葉っぱは何だ? 革は分かるけどさぁ」
「これか? これは“アラバサの葉”だ。世界中で自生している植物の葉で、これで肉などを包んでおけば、それの腐敗の進行度を抑える事が出来る。欲しければ数枚渡そうか?」
「え、本当か! くれ! 欲しい!」
「……ほら。あまり使いまわしはするなよ。何処ででも取れるからな。見つけたら教えてやる」
「おう! ありがとよ!」
彼女は腰の鞄から折りたたんだ葉を数枚取り出す。
俺はそれを受け取って確認した。
葉っぱ自体はふにゃふにゃであり、少ししっとりとしていた。
水分を多分に含んでいるように見えるが。
何か油のような手触りがする。
無味無臭であるが、恐らくこのしっとりとした何かが食べ物の腐敗を抑えてくれるんだろう。
そんな事を考えながら、俺は鞄にそれらをしまい込んでおいた。
俺は鞄を背負い直してから立ち上がる。
アードルングも焚火に土を被せて消していた。
「よし。では、そろそろ目的の場所へ行こうか」
「うし、いよいよだな……でも、何でラッシュ・ボアの討伐を依頼したんだろうな?」
「……詳細を見ていないのか? 確か、ラッシュ・ボアが街道に出てくる頻度が増えてきているからで、人の住む村や街を奴らが襲わないようにする為らしい」
「十匹程度で意味があるのか?」
「意味ならあるさ。人からの警告という意味でなら十分すぎる程にな……奴らも馬鹿ではない。人に危険を感じれば、無暗に襲おうとはしなくなる」
アードルングの言葉に納得する。
彼女はそんな俺を見て「他に質問は?」と聞いてきた。
俺がもう大丈夫であると伝えれば、彼女は無言で目的の場所を目指して歩いていった。
俺はそんな彼女の後をついていきながら、ラッシュ・ボアとの戦闘について考えていた。
暫く歩いていけば、ラッシュ・ボアの群れが見えて来た。
呑気に木の下に転がる木の実を食べている。
まだ此方には気づいていないようで、アードルングと共に近くの岩陰に身を隠した。
「アレがか……それなりにデカいな」
「あぁ全高は平均すれば約三メーテラほどで、全長に至っては五メーテラほどもある猪のような見た目をした魔物だ」
アードルングの言葉を聞きながら観察する。
黄色い眼球はぎょろぎょろと動いていて、額らしき部分は丸く平らだった。
顎の下には髭のようなものが生えていて、頭部から尻尾に向かって真っすぐに黒いたてがみが生えている。
毛はたてがみ以外は赤茶色であり、それが“自然によるもの”なのかは判断がつかない。
そして、何より目を惹くのがその立派な牙であり、先端が鋭利なそれで突かれれば革の鎧なんて容易く貫通されるだろう。
俺はごくりと喉を鳴らす。
確か、レッド・ファングとは比べ物にならないほどの圧を感じる。
これでまだ通常種の枠組みであり、少しおかしいのではないかと思ってしまう。
すると、アードルングは俺の緊張を察してフォローするような言葉を言ってくれた。
「……まぁアレは“大体”が通常種の枠組みではあるが。固体や規模によっては危険種に分類される場合もある」
「……え? それは初耳なんだけど……じゃ、ゴブリンとかスライムでもって事か……いや、でもあの時もあの男がゴブリン・ロードを倒したとかって」
あの時、ドラゴン討伐に乗り出した銀翼と呼ばれる冒険者パーティ。
周りの奴らが言っていた話を思い出せば、確かにゴブリン・ロードが率いる大軍を倒したと聞いていた。
ただのゴブリン程度であればそこまで噂するほどではないだろう。
そう考えるのであれば、ゴブリン・ロードは十中八九……。
「ゴブリン・ロードは間違いなく“四級危険種”に分類されるな。それが率いる隊が厄介でな。規模によっては更に危険度が跳ね上がる場合もある……過去にゴブリンの軍勢によって滅んだ街も記録されていたからな」
「そうなのか……なら、アイツらもそれくらいの危険性を秘めている可能性があるって事か」
俺は木のみを食べているラッシュ・ボアを見つめる。
呑気に食べているところだけなら害は無さそうだが。
一度、人の姿を見つければ襲い掛かって来るんだろう。
あんなのが馬車に突っ込んでいこうものなら、それだけで馬車は破壊されてしまう。
いや、馬車だけで被害が収まるのならまだいい。
もしも、あんなのが人々を襲えば……それはダメだな。
俺はゆっくりと腰の鞘から剣を抜く。
例え、今は害がなくとも何れ人を襲う。
その可能性が少しでもあるのなら、俺自身の手で潰さなくてはならない。
それが依頼を受けた者の務めであり――冒険者の仕事だからだ。
「それじゃ、行ってくるぜ」
「あぁ危なくなったらすぐに加勢する……もしも、手に負えないと判断したら」
「――分かってる。その時は頼むぜ」
俺はにしりと笑う。
そうして、岩陰から飛び出した。
ラッシュ・ボアの数は視認できるだけでも十二匹はいる。
あの数を一人で捌き切るのは無理があるだろう。
つまり、俺がまずするべきことは――こうだ!
俺は地面に転がる石を剣で弾く。
すると、それは木のみを食べていたラッシュ・ボアの一匹に当たった。
食事を邪魔された奴は鼻息を鳴らしながら俺を睨む。
そうして、俺を狙って突進――!
「――――ッ!!!!!!」
「うぁ!?」
ラッシュ・ボアが雄叫びを上げた。
それを聞いた他の仲間たちが顔を上げる。
そうして、俺を完全に視認して姿勢をゆっくりと前に倒す……やべぇ!!
一匹一匹と戦うつもりだった。
しかし、奴は群れとしての最適な行動を取った。
魔物は馬鹿ではない事は知っていたのに迂闊だった。
奴らはそのまま足で地面を蹴って――はや!?
かなりの距離があった筈だ。
それがすぐ目の前に迫ってきていた。
俺は咄嗟に上に飛んで回避する。
奴らはそのまま猛烈な勢いで俺がいた場所を駆け抜けていく。
奴らが巻き上げた土埃が舞い、奴らは地面を滑りながら停止する。
そうして、此方へと再び狙いをつける頃には俺は地面に着地していて――来る!
奴らが一斉に駆けだす。
その瞬間に、俺は奴らから距離を取るように後ろへと下がり、そのまま助走をつけて上に飛ぶ。
急な動きについてこられない奴らはそのまま一直線に駆け抜けて行った。
……動きは速いが単調だな。急な方向転換も出来ない上に、やる事は体当たり以外にない。
なるほど、よく分かった。
こいつらが通常種に分類されるのは攻撃パターンが分かりやすいからだ。
攻撃を避けるだけであるのならそれほど難しい事は無い。
ただ当たれば致命傷となるほどの危険性を秘めているのは確かだ。
奴らは地面を滑りながら再び停止し旋回。
そうして、俺に狙いをつけて駆けだしてきた。
奴らの攻撃を回避しながらの攻撃である野ばら――これだな!
俺は奴ら目掛けて駆けだす。
奴らはそのまま頭を突き出しながら突進してきて――俺は飛んだ。
奴らと接触する直前に身を翻すように飛ぶ。
そうして、剣を溜めながら一気に振りかざす。
狙うべきは硬い頭部ではなくその体であり――甲高い音が鳴り響いた。
「――いっ!?」
思っていた感触ではない。
ぴりぴりと剣を通して腕に振動が伝わって来る。
俺はそのまま無様に地面を転がっていって、流れるように立ち上がる。
そうして、剣を握った手を見れば震えていた。
今の感触は岩や鉱物を思い切り叩いた時に似ている。
ラッシュ・ボアの頭部付近は硬いとは思っていた。
しかし、実際には体の方も硬かったというのか。
これは予想もしなかった結果だ。
全身が鉱物のように硬いのであれば、アイツの弱点は何処に……!
思考しようとした瞬間。
目の前に殺気に満ちたボアの顔が迫る。
俺は本能のままに上に飛んで回避。
そのまま剣によって攻撃を――ダメだ!
俺は攻撃を中断し、そのまま転がるように奴らの背後に回る。
体がダメなら足を狙おうと――くそ、速すぎる!!
足を狙おうとすれば、既にかなりの距離を離されている。
恐らく、足であれば攻撃が当たる筈だと思っていたが。
奴らが突進している中で足だけを攻撃するのは難易度が高い。
避けてからの攻撃では間に合わない。
狙うのであれば攻撃が当たる直前であるが……本当にいけるのか?
もしも、勘が外れていればそれで終わりだ。
前方からか側面からの攻撃になるかは分からないが。
確実に攻撃が決まらなければ俺は奴らの体当たりを喰らう事になる。
群れの端を狙おうにも、そこへと飛べるほどの跳躍力は無い。
どうする、どうする、どうする――あれは?
目に映ったのは平原に生える木々。
こいつらが食べていた木の実のなる木であり。
それらは何本もバラバラに生えていた。
木の幹がしっかりとした木であり、もしもアレにこいつらが――そうか!
短い時間で考えを纏める。
そうして、俺に向かって突進してくる奴らに向かって走る。
そうして、そのまま軽く飛び敵の頭部に足をつけてそのまま更に高く飛ぶ。
俺に頭を踏まれた奴は鳴き声を上げて怒りを露にする。
そうだ、怒れ。怒って怒って周りが見えなくなれ。
俺はそう思いながら、地面を転がるように滑っていく。
その間に転がっていた硬い木の実や石を集めておく。
俺はすぐ近くにあった木の前に立った。
奴らは再び俺に狙いをつけて突っ込んでくる。
俺はそんな奴らに対して、全力で木の実を投げつけた。
渾身の振りによる投擲であり、如何に硬い体皮を持っていようとも少しくらいなら何かを感じる筈だ。
何匹かは目に触れたようであり、怒りの籠った声を上げていた。
奴らは唾液を垂らしながら突っ込んでくる。
俺はそれを見つめながらギリギリまでその場で待つ。
まだだ、まだだ、まだだ、まだ、まだ――今だ!!
俺は全力で上に飛ぶ。
すると、俺の背後にあった木にボアは勢いのままに突っ込んでいく。
と言っても、木に衝突したのは一匹だけで。
他の奴らはそのまま向こうの方へと走っていく。
木はバキバキと音を立てて折れ曲がる。
俺はすかさず地面に着地して、停止している奴の背後に立つ。
牙を木から抜くのに手間取っている奴の足を狙う。
そうして、薄く武器に魔力を流して――斬る。
ひゅんと風を斬る音がして。
刃が奴の足を抜けていく。
瞬間、奴の鍛え抜かれた足からどばりと血が噴き出した。
後ろ脚を二本失った奴は悲鳴を上げながらごろりと倒れる。
悲鳴を上げながら奴はバタバタと暴れていて――これは!
ラッシュ・ボアの腹が丸見えになった。
その腹には毛が全くない。
柔らかそうなピンク色の皮膚が見えていて。
俺は考える間もなく、剣をそこへと全力で振り下ろした。
「――ッ――――…………」
「弱点は此処か!」
腹に触れた刃はすんなりと突き刺さる。
そこから血が勢いよく噴き出して。
奴は小さな声を上げながら、びくびくと失神して動かなくなった。
足への攻撃は魔力を流した状態であれば通る。
だが、此処は明確な弱点では無かった。
本当の弱点は奴が隠している腹の部分であり。
此処だけならば魔力を流さなくとも俺の攻撃は通る。
それを認識し、こいつらへの対処法が理解できたと――何だ!?
平原に響き渡る鳴き声。
見ればラッシュ・ボアたちが一斉に鳴きながら散開していた。
俺はそれが何の行動なのかは分からない。
だが、間違いなく仲間を殺された事による行動だとは分かる……二度、同じ手は食わないってか。
中々に利口な奴だと考えた。
そうして、俺は剣を死体から抜きながら考える。
……恐らく、これからは全く別の戦闘スタイルを取る可能性が高いな。
態々、散開するような動きを取ったんだ。
十中八九が俺の動きや攻撃を封じるための作戦だろう。
敵によって動きを変えるなんてのは今まで見た事が無いが。
これこそが魔物本来の戦い方に違いない。
あの時に戦ったレッド・ファングもそうだ。
こいつらだってただ黙って俺たちに殺されてくれる訳じゃない。
これは互いの生死を懸けた戦いなんだ。
互いに全力であり、必死であり……覚悟は決まったぜ。
「何処までも付き合ってやるよ。だけどな。最後に立っているのは――俺だッ!」
「「「「――――ッ!!!!!」」」」
奴らが猛然と駆けてくる。
いや、全部ではなく一部だけで。
俺は注意深く動きを止めている奴も視界に入れる。
思考は止めない、足だって常に動かす。
目ん玉をかっぴらいて、常に敵の気配を感じろ。
通常種だからと侮れは俺は死ぬ。
生きる為に全力を出せ。どんな無様であっても、絶対に勝つんだ。
俺は闘志を燃やしながら、迫り来るラッシュ・ボアを見つめる。
奴は倒れた木を破壊しながら突っ込んできた。
血走った眼を向けるそいつを視界に入れながら、攻撃が当たる直前に跳躍。
そのまま破壊された木に着地してから前に飛び――瞬間、別のラッシュ・ボアが横から躍り出る。
「――ッ!」
俺はそのまま奴の額に手をつく。
そうして、奴の動きに合わせるように奴の体の上を転がる。
奴は俺を弾き飛ばすように体を跳ねさせて。
俺はそのまま地面に転がり――敵の足音が聞こえた。
俺はそのまま勢いよく転がる。
体のスレスレをラッシュ・ボアの足が踏み抜いていく。
俺が立ち上がろうとすれば、背後から気配を感じた。
俺は中途半端な姿勢で横へと転がり回避し。
そのまま大地を蹴って走る――考えたな!
敵は俺一人。
全員で突っ込んでいかなくともやりようはあった。
最初の行動は弱点を俺が知らないと考えての行動だった。
足を狙わせない為の動きであり、此方の戦意を削る為の戦闘だった。
だが、仲間を一匹やった事によって奴らは完全に戦闘態勢に入った。
確実に俺を殺す為の戦い方であり、思考する時間も休む暇も与えない動きになっていた。
これが奴らの本来の戦い方であり――確かに、状況によったらあの植物の魔物くらいだな!
地面を転がりながら回避。
口の中に奴らが巻き上げた土が入る。
それを唾液と共に吐き出しながら、俺は駆けていく。
構う事は無い。例え今からが本気だとしても、俺は奴らから逃げない。
全力だ。
全力で俺は奴らを狩る。
人々の為、治安を守る為――今は違う。
単純に男として、一人の冒険者として――こいつらに勝ちたい。
「――はは!!」
俺は笑みを深める。
そうして、剣を振って土を巻き上げた。
突っ込んできた奴らは目に土を入れてしまって狼狽える。
視界を潰された事によって動きが乱れたそいつの側面に回った。
体を回転させながら姿勢を低くし――足を斬り付けた。
魔力を流した状態での斬撃。
それを諸に喰らった奴は地面を転がっていく。
そうして、前足と後ろ足を一本ずつ失ったそいつは体を横たわらせながら暴れていた。
俺はそいつを見つめて――上に飛ぶ。
背後から迫った別のラッシュ・ボア。
確実に俺の死角を取ったと思ったんだろう。
全力での走りであったからこそ、急には止まれない。
奴はそのまま倒れている仲間にぶつかった。
その牙は深々と死に体の仲間の腹に突き刺さる。
五メーテラはある巨体が互いに暴れて地面を転がっていく。
牙が抜けても、奴はそのまま地面を滑るように転がって――俺は着地と同時に駆けた。
足に全ての力を注いで地面を蹴りつけた。
一気に転がっている奴へと迫り刺突の姿勢で剣を構えて――突き刺す。
ずぶりと剣が突き刺さる。
血が噴き出して返り血を全身に浴びた。
魔物は体を大きく振るわせて絶命する……これで三体!
残りは九体であり、奴らの表情にも怯えが見えて来た。
俺はそんな奴らを視界に入れながら剣を引き抜く。
そうして、血を払いながら下に構える。
「どうした? 来いよ……尻尾撒いて逃げるか?」
「「「「――――ッ!!!!!」」」」
奴らは俺の言葉を理解していない。
しかし、表情だけで挑発されたと理解したんだろう。
奴らは怒りに任せて俺に襲い掛かって来た。
俺はそんな単純な思考の魔物を見つめながら、にやりと笑う。
――師匠、俺はもっと強くなるぜ!
勢いよく駆けだす。
そうして、剣に魔力を流していった。
あの世の師匠が笑っている気がする。
弟子の成長を喜んでいるからじゃない。
弟子が自分の人生を“正しく生きている”事を喜んでいるんだ。
「ああああぁぁぁ!!!」
雄叫びを上げる。
そうして、俺は全力で飛んだ。
奴らは顔を上げる。
そんな奴らの背中に乗りたてがみを掴んだ。
奴らは必死に俺を振り落とそうと暴れて、俺は笑みを深めて全力で掴まっていた。
まだこんなもんじゃない。
もっとだ。もっともっと強くなる。
天空庭園に行くんだ。弱いままではいられない。
俺は剣を上に構える。そうして、剣の柄を勢いよく振り下ろしラッシュ・ボアの眼球に突き刺す。
奴は絶叫して暴れて転がる。
俺はそいつから飛びのき、そのまま転がる奴に向かって駆けた。
奴は唾をだらだらと流しながら俺に怯えている。
そんな奴を視界に入れながら飛び掛かり、間髪入れずに横一線で腹を斬り付けた。
鮮血が噴出して再びその血を全身に浴びる。
俺は笑う。
楽しいからじゃない。
恐怖を誤魔化す為、己が闘争心に火をつける為に笑う。
まだやれる。まだ俺は動けるぞ。
俺は自らの鼓舞するように叫んだ。
そうして、剣を振りながら全力で敵に向かって駆けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます