第5話
骨折り損のくたびれ儲け。
…ご苦労な事だ。
言葉尻に苦笑を滲ませながら、俺はいつも通り『主』をかばう。すると。
「そうやって貴方や
マリエットは片手にかけた衣装を未練がましくチラリと見た後、軽く俺をにらむ。
「まあまあ、そう怒るな。あの方には私からも言っておくから」
だいぶウンザリしながらもそう言ってやるが、
「そうね。私からはお逃げになっても、貴方との朝の剣の鍛練にはおいでですものね」
マリエットの声は恨みがましいままだ。
しかし。その剣の鍛練の時間はとうに過ぎている。
流石にこれは初めてだ。
マリエットの話に段々と苛ついてくる。
主の気持ちを無視した女の戯言など聞き苦しいだけだ。
「聞いているの?」
が。
途中から俺はその愚痴を半分も聞いていなかった。
背後で
勿論マリエットにはそれは聞こえない。
俺は背後の気配をそのままに話を切り上げる。
「マリエット、その話もいいが、そろそろ奥様のお目覚めの時刻では?」
公爵夫人は朝が弱く、お目覚めは他の方より若干遅い。
「あら、いけない。まあ。…奥様~」
マリエットは今度は反対の方向へちょこちょこと駆け出していく。
それを見定めてから俺は扉を閉じ振り向く。
「そこは貴方の為の出入口じゃないんですがね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます