第3話

「お前を見ていると、お前の父と私の若い頃を思い出すよ」

一度言われた、リュティーリア公爵の言葉を思い出す。

父もまた。公爵の為に生き、公爵が夫人を迎えるまで共に暮らし。公爵の結婚後は自らの伯爵家を継ぎながら、公爵への護衛を未だに続けている。

俺も父と同じ道筋を通るかは分からない。

護る“対象”は未だ齢十九歳。

それに父親の時代と違い、時がたった今は国の内情も変わってきている。

見せかけの穏やかさとは裏腹に。

笑顔の裏に針を隠し、水面下で行われる裏切りや陰謀は途切れる事なく、むしろあからさまになってきている。俺はそんな貴族とは名ばかりの輩から主を護る為に精進を続けてきた。

幸い、主の聡明さは人並み外れたもので、他の貴族の子弟の愚かさ加減を目にする度に主の影でいられる事の幸運を只、噛みしめてきた。

去年迄、主が十八の歳までは─。

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