1.~王国~

第2話

群雄割拠する時代。


山のふもと、湖のほとりにその『王国くに』はあった。


公国エルストレイア。


後ろにそびえる山は自然の要塞の役割を果たし、目の前に広がるあおたたえる湖は豊かな恵みをもたらす。

王族と三つの公爵家からなる治政は国民に不満を持たせるものでなく、おだやかなものであった。

王族の君臨の下、三つの公爵家はそれぞれの所領を持ち、他の貴族はその下に存在する。

ある意味、バランスが保たれた関係。

俺が仕えるのはその公爵家の一つ。

三つの公爵家の中で最も古く、血統も王族に近い“リュティーリア公爵家”。

とは言っても。

俺が『仕えている』のは、ゆくゆくは公爵となる長男のみ。彼の護衛、“影”となる役目の他は一切を免除されている。

それは代々の公爵をまもる俺の家、公爵家直属の伯爵家、デル・エスト家の役目でもあった。

あの『夜』から。

俺は公爵家に部屋をもらい、ほとんど彼と離れた事は無い。

貴族のはしくれである己自身が彼を護衛するにあたって恥ずかしくない程度の鍛錬たんれん、勉学の時は、そばを離れたが。それ以外は殆ど彼と過ごしてきた。

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