第2話


新品の手袋の中を手汗で満たしながら、洞窟の入り口の前に立つ。


ダンジョンへの入り口は洞窟に入ってすぐの階段である。


情報によると、どのダンジョンも階層ごとに同じ類のモンスターがいるという。


第一階層はスライムらしい。


講習会では、スライムは速度は遅く、攻撃の類は体当たりをゆっくりとするぐらいでほとんど何もしてこない事や、電気や火などの攻撃はとても効くが、斬撃や衝撃による攻撃はあまり意味を成さないと言っていた。


ちなみに、ダンジョン内では重火器の類は扱える。

だが、ダンジョン内ではレベルアップがあり、身に付けている服や装備品の類も強度や魔力に対する耐性が上がっていくという。

なので、重火器などでは弾丸にそれが適応されるために、誰も使わないのだ。(もし、日本で重火器をダンジョンで使いたいとなれば、さらに厳しい審査をクリアしないとならない。)


階段を下ると周りはほんの少しだけ暗く、ジメジメしていた。


よくよく見ると、洞窟の壁に張り付いている苔がほんの少しだけ発光していた。


(この苔、面白そうだし持ち帰るか。)

とりあえず、家に持ち帰って色々と試してみよう。


リュックから20個セットで買った試験管とピンセットを取り出す。


後ろから他の人が入ってくる前に壁からピンセットで苔をほじくり出す。


(お、やっぱりこれは壁から外しても発光してるんだ。)


あとで、受付に取得物として報告しないとな。


コルクで蓋をした後に前を向くと、丸い水球がプヨプヨと動いていた。


スライスだ。


映像では見たことはあるが、生で見るのは初めてだ。


(あれが、スライム…!!)


異世界で王様になったり、とても美味しい経験値になったりで定評のスライム。


ポケットに入れてある果物ナイフを抜いてスライムを突いてみる。



ツン、ツン。



触れるたびに動いてはいるが、刃先が入るような感じはない。


(確かに。これじゃ斬撃も衝撃も効かなさそうだな。)



早速、僕はリュックからアルコールとマッチを取り出す。


スライムにアルコールをかけて、マッチを点火。


少しだけ、どこかイケナイ気分になりながらもマッチをスライムに落とす。


火が燃え広がる音は無かったが、見た目で言えばボワッ、だろうか?


特に抵抗はなく、数十秒もすればのだった。



ダンジョンのモンスターは、死ぬと何かモノを落として消える。


質量保存の法則とかにバリバリ喧嘩を売っている現象なのだが、現実に起こってるのだから納得するしかない。


(で、確か声が聞こえるんだっけ?)


自衛隊の人曰く、モンスターを殺すと“スキル”が貰えると言っていた。



ほんと、なんでもアリだな。



そんなことを考えているとが聞こえた。




男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも聞こえる。そんな声。


どこか、懐かしい感じがした。



『情報観測者のスキルを手に入れた。』



頭が『情報観測者』の使い方や効果を勝手に理解していく。


いや、理解させられていく。




理解をした僕は、背中に薄っすらと冷や汗が流れ

る様な感覚がした。




(これが、『情報観測者』の内容なのか………)



早速、スキルを使う事にした。



(えっーと、このスキルには起動する為のキーワードを指定するんだよな。何にしよっか…)


無難に『情報観測者』とかは…ナシだな。他者にスキル名がバレるだろうし。


(じゃあ…略して…)



手袋を外し、壁に付いている苔に右手をかざす。



キーワードは、



せろ」




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