11.5件目 どんな顔するのかなぁ

「はぁ……」


 多分、今までの人生で一番大きなため息をしているかもしれない。だって、だって——。


「どうして毎回『アダルトグッズ』って商品名で届くのかなー……。他のサイトだと、ちゃんとそういうのは伏せてくれてたんだけどなぁ。でも、ここのやつが一番クオリティ高いって言われてるしなぁ。……なんかもう…私って、かなりヤバくない…!?」


 膝から崩れ落ち、荷物の入った段ボールに突っ伏す。

 そして、過去の自分を振り返る。


「急に下着姿見せたり…この前なんか裸エプロンしてるし…頻繁にアダルトグッズ買ってるし…。絶対に康太くん、私のこと痴女って思ってるよね……。はぁー、どうやったら弁明できるのかなー。と言うか、そもそも弁明なんてできるのかな……」


 考えれば考えるほどに辛くなる。

 無気力なまま立ち上がり、のそのそと寝室へ向かう。


「正直、弁明の余地なんてないものねぇ。康太くん、どんな顔するのかなぁ。——私が、『エロ漫画家だ』って知ったら」


 勢いよく寝室の襖を開けると、目の前にはシングルサイズのベッドと、隣には小さな作業机——つまり、仕事場でもあるものが設置された部屋が目に入る。

 ちょっとした興味から始めたことが、いつの間にか仕事になっていた。

 もちろん、描いていて楽しいし、嫌だと思ったことはない。ただ、それが万人から受け入れられるものでもないということは、ちゃんと理解している。


「私のことを受け入れてくれてるとは言っても…流石にこれは幻滅されるかなぁ…」


 そんなことを思いつつも、席についてタブレットを起動する。

 発光する画面には、昨日描いていた途中のページが表示される。


「あー、ここのシーン描けなくておもちゃ注文したんだった」


 けどもう、今日はやる気出ないなー。康太くんと話したいな……。

 椅子にもたれかかり、ぼうっと天井を眺めた。

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