9件目 まるで夫婦のようだ
「はぁ、今回もなかなか面白かったなぁー。里美さん、全部読み終わりましたよ!」
「ありがとう。じゃあその辺に置いといてくれるかしら」
「分かりました。それにしても、本当にいいんですか?ご飯までご馳走になっちゃうなんて……」
「いいのよ。私が誘ったんだから」
ザクザクと野菜を切る音、包丁がまな板と接触するトントンという音が台所から聞こえてくる。鍋の沸騰した水がグツグツと鳴る音もとても心地よく感じる。
なんだか、新婚さんみたいだなぁ〜。
料理をしている女の人の後ろ姿は最高だ!
ただ、少し気になる点があると言えば——
「あのー、どうして裸エプロンなんですか」
俺の言葉に、彼女はビクッと反応した。
「た、たまたまよ…っ!」
なんとまぁ見苦しい言い訳なんだ。
嬉しい、嬉しいけども!それだとご飯をいただく前に里美さんを美味しくいただいちゃいそうですよ!後ろ姿しか見えないとは言え、
細い腰から続く、大きすぎず、小さすぎずな柔らかそうなお尻についつい見惚れてしまう。
里美さんの趣味は分かってるけど、ここまで出されるとビックリしちゃうよなー。
彼女のお尻をつまみに、茶を啜る。
うむ、絶景かな、絶景かな。
そうやって和んでいると、突然里美さんが『あっ!』と声を上げた。
「なっ、なにも見てませんからっ!」
俺は慌てて顔を逸らす。
しかし、どうやら声を上げた理由とは全く関係無かったようだ。
「卵きらしちゃってた…」
「それなら俺がすぐ買ってきますよ!」
「こんな姿じゃ外には出られないし、お願いするわね」
「はい!」
男の俺の前で、その姿でいるのもどうかと思いますけどね。そんなことは口に出さず、俺は近くのコンビニへと向かうことにした。
「行ってらっしゃい」
ひらひらと手を振りながら見送ってくれる。
あぁ、まじで夫婦みたいだなぁ。
「……っ、行ってきます!」
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