一途
……私の友人はどこか変わっている。
「私は宇宙人に会いたいんです!」
初対面の時、そう宣言した彼女は、私の手を取って、部活動巡りをはじめた。その後、強制的に天文部と写真部に入部させられ、私は今日も今日とて、彼女の宇宙人探索に付き合わされている。
「うーん、いないなー」
暗い夜空に広がるいくつもの星々に向けられた望遠鏡のレンズは、ただの一瞬も星を映すことはない。ベガ、デネブ、アルタイル、見事な星座たちを無視し、天の川の中を右へ左へ上下上下すいすいすいとせわしなく動き回っている。
「そんな簡単に見つかるものじゃないでしょ……」
宇宙人宇宙人って、その熱意はどこから来ているんだろうって常々思う。
「ねえ」
「何?」
「どうしてそんなに宇宙人に会いたがってるの?」
私の言葉に、彼女は待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
「私ね、何年か前に交通事故に遭ったんだ……。歩道に突っ込んできた車に、私以外みんな潰されて死んじゃった。私も遠くに飛ばされたの。その時、誰かが助けてくれたんだ。私、その時、その人に言ったの「誰?」って……そしたら、「宇宙人だ」って言われたの。私、またあの人に会いたい。だから宇宙人を探しているの」
それを聞いて、私は思った……素直すぎる!
「そ、そっか……会えるといいね」
彼女は「うんっ」と言って、また望遠鏡に目を通した。
罪悪感で心がチクリと痛む。
「いつか会えるよ。宇宙人を探していれば、またどこかで出会えるはずなんだ」
そんな呟きに、私は冗談交じりにこう言った。
「もしかしたら、結構近くにいるのかもしれないね!」
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