第12話
カガネが膝をついた瞬間、耳元にかすかに響く声があった。
「カガネ、聞こえる? あんた、ほんと無茶するんだから」
驚きと安堵が一瞬、彼の表情を覆った。
「フロスト……! どうして?」
「私の手助けがなくてもやれるって言ってたけどね。でも、どうやら救援が必要みたいじゃない」
彼女の声は通信を介して響いていた。カガネは警備兵たちに取り囲まれていたが、その時、異変が起こり始めた。周囲の警備兵たちが突然、挙動不審にうろたえだした。
「フロスト、何をやってる?」
「お楽しみの始まりよ。あんたの仇討ちに付き合ってあげる。少し黙って見てなさい」
彼女は
「通信を切断……何だこれは……!?」混乱する警備兵の一人が叫ぶと、次々に他の兵士たちの視界にも異常が広がった。
制御されたデバイスが意図しない動きを始め、彼らの隊列が徐々に崩れ始める。
「カガネ、今よ。そいつら、目の前の敵も分からなくなってるわ」
フロストバイトの声に呼応するように、カガネの体が自然に動き出す。彼の義体に埋め込まれた高性能の動力システムが再び動作し、電撃の余韻を振り払うかのように力がみなぎる。
カガネは刀を握りしめ、警備兵の一人へ駆けよった。視界を狂わされた警備兵は、彼の接近に気付く間もなく単分子ブレードで斬り伏せられた。
「通信は遮断、視界も狂わせた。今の彼らはただのカカシみたいなものよ」フロストバイトが得意げに言う。
カガネは次々と警備兵を倒し、フロストバイトの支援によって完全に優位に立っていた。彼の義体はすべての動きを最適化し、目標を正確に撃ち抜くごとに鋭い刃が反射的に動く。
彼は一瞬の隙を逃さず、最前線の兵士を跳ね飛ばし、その背後へと駆け込んだ。
フロストバイトのハッキングがなければこの進撃は不可能だった。
カガネは冷静に状況を判断し、フロストバイトの声に耳を傾けながら、着実に警備兵たちを片付けていく。
「君の助けがなければここにはたどり着けなかった。助かったよ。……ありがとう」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、こんなことなら最初から私の計画に従えばよかったのにね」フロストバイトの軽口に、カガネは思わず笑みを浮かべた。彼女の支援がある限り、この先も不可能はないように思えた。
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