第10話
カガネは息を殺してメタリンクス社の廊下を進んでいた。セキュリティシステムの目を盗むために義体のステルス機能を使用し裏口から静かに建物の奥へと入り込んだ。フロストバイトの手を借りずにここまで来られたことに、ほんのわずかな自信が芽生えたが、それはすぐに警戒心にかき消される。
「あともう少しで、奴のオフィスがある最上階だ……」
廊下を滑るように進みながら、カガネは息を整えようとし、この機械の体ではそれが不要なことに気が付いた。
彼の義体は静寂の中でほとんど音を立てない。
全身の機能を最大限に使い、警備員のルートを避けながらビル内を進むのは、まさに狭い道を綱渡りしているような緊張感を孕んでいた。
しかし、その緊張は突然のアラーム音に一瞬で崩れ去った。
「侵入者発見。第5セクションに警備員を派遣します」
カガネの頭に冷たい汗が流れた。どうやら防犯システムの感知にかかってしまったらしい。次の瞬間、数名の警備兵が姿を現し、彼を取り囲むように進み出てきた。
「降伏しろ! 抵抗すれば、命の保証はないぞ!」
カガネは軽く身を低く構え、彼らを見据えた。義体の筋肉に電力が走り、彼の体が次の瞬間に備えて動き出す。
だが、数の差が圧倒的だった。廊下の両側から次々と警備兵が集まり、カガネを完全に包囲する形になった。
逃げるか? カガネは少し考える。ここで退けば二度と仇に近づけないかもしれない。カガネの頭の中で復讐の火が燃え上がる。彼は剣を握りしめ、冷たい鉄の感触を確かめた。
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