第9話

 フロストバイトはカガネの前に立ちはだかり、強い口調で言い放った。


「今すぐ乗り込むなんて無謀よ。メタリンクス社の本社はあなた一人で乗り込んでどうにかできるような場所じゃない。準備が必要なの!」


「のんびり構えてなんていられない!」


 カガネの瞳には焦燥と怒りが燃えていた。


「母さんを殺した仇を前に、黙って待てるわけがないだろ!」


 フロストバイトは一瞬だけ悲しそうに目を伏せたが、すぐに冷静な声を取り戻し、きっぱりと続けた。


「そんな感情にまかせて突っ込んだら、殺されるのはあなたの方よ。メタリンクス社には専属のセキュリティ部隊が控えている。あなたの敵はCEO一人じゃない。無数の兵士と最先端の防衛システムが待ち構えているのよ」


「でも、もうこれ以上待つのは無理だ」


 フロストバイトの表情が少し硬くなった。


「だったら好きにしなさい、カガネ。あなたの命はあなたのものよ。でも、もしもこのまま突き進むなら、私はもう何も手助けしない」


 カガネは一瞬、彼女の言葉に言い返すべきか迷ったが、すぐに顔を背け、冷たい声で答えた。


「わかった。君に助けを求めない。俺一人でやってみせる」


 フロストバイトの視線が彼に突き刺さるように感じたが、カガネは無言でその場を離れ、夜の闇に消えていった。

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