第6話

 夜の羽佐間ハザマ市、霧がかった薄暗い路地をカガネは義体の足音も響かせずに歩いていた。彼は情報の断片をかき集め、一人で復讐相手にたどり着こうとしていた。しかし、都市に根を張るメガコーポの影は深く、その要塞めいたビルに立ち向かうには、いかに義体で強化されたといえど、力が及ばなかった。


 母を殺した黒づくめの男たちの付けていたバッジはカルティベイト社のものだった。カルティベイト社のビルの近くにまで忍び寄ると、周囲に複数の監視ドローンが見えた。義体のシステムが即座に警告を発し、カガネは意識を集中してドローンの動きを読み取ろうとした。しかし、侵入プログラムは弾かれ、瞬く間に視界がノイズで埋まる。ビルの防衛システムが、彼の義体に激しい抵抗を見せたのだ。


「…俺一人じゃだめか。」


 無力感が胸に迫り、冷たく固い義体にこもる彼の心が軋む。仕方なく退却を選び、再び闇に紛れ込む。仇を討つためにはさらなる力と知識が必要だという現実が、カガネにのしかかってきた。

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