第5話 ハーモニカ

 私は軽く夕食を済ませると。自室で自画像を描き始める。


 この孤独が神の一枚なればと思ったからだ。


 背景を何故か鮮やかな黄色にしてみた。これで合っているのか?


 私の油絵は我流である。ネットに載っている情報を参考にして描き始めた。


 ダメだ、筆が乘らない。私は諦めて熱いシャワーを浴びてから寝ることにした。


 下着とインナーだけ変える事にして一階のお風呂に向かう。途中、リビングで寝ているアズチを発見した。


「君の瞳は孤独の代名詞に値するね」

「アズチ、起きていた?」

「あぁ、最初の因子は孤独、最後の因子は余命一年。君はどんな願いも叶うのに神の一枚にこだわるのだね」

「……」


 私が言葉に支えていると。


「ゴメン、君と言う個性は願いを叶えるのに丁度いいからだ。これで世界征服など言わないから選ばれたのだよ」


 私はアズチの謝意に心に留めてシャワーを浴びる事にした。


 翌日の昼休み、私は誰も居ない校舎の屋上に導かれる。そう、ハーモニカのメロディが流れてきたからだ。


 ふと、リックサックを見ると魔女のアズチが居ない。


「アズチ?」


 屋上の人影を感じながら、ドアを開けるとアズチがハーモニカを吹いている姿が見えた。


「やはり、君は適合者だ、このハーモニカのメロディは孤独な心に反応する」

「そんな事はどうでもいい、今はアズチのハーモニカが聴きたいの」


 その言葉を聞くとアズチはハーモニカを奏で始める。


 ♪♪♪


 それは寂し曲であった。私は大きく息を吐く。ハーモニカの曲が終わる頃には空っぽな心に恵みの雨が降った気持ちだ。


「何故、今さら孤独な心に響くメロディを奏でるの?」

「これは旅の魔女としての慰め。私も孤独を好むからよ」


 再びアズチはハーモニカを奏で始める。私は午後の授業をすっぽかして、アズチの演奏を聴くのであった。



 そして、屋上に太陽の光が雲の間から差し込むとアズチは手を止めてハーモニカの演奏を終える。次の瞬間にはリックサックにストラップとして揺れていた。


 独りか……。


 授業に戻ろう、私は教室に向かうと授業中にもかかわらず自席に着く。


『ゴホン』


 やはり、先生がわざとらしく咳払いをする。私は問題児として有名らしい。


 しかし、今の時代は注意される事も無い。そう、子供の方が偉いのだ。


 それは正確な解釈なのかは疑問だが、そんな考えだから問題児扱いされるのだ。

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