第2話 余命一年

 翌朝、私が一階に降りて行くと、リビングのソファーにアズチが寝ていた。


 魔女は夜行性なのかと納得をしていると。


「おはよう、君は早起きだね」


 眠そうなアズチの挨拶に適当に答えて朝ごはんを作る。と、言ってもシリアルを取り出しただけである。朝はこのシリアルと野菜ジュースの組み合わせだ。


「アズチ、貴女も食べる?」

「あいざんす」


 適当な言葉が帰ってきた。私は気にせずにアズチの分の朝食を用意する。


 しかし、私を選んだのが孤独を好むからだと聞いたが真意をもう一度たずねる事にした。


 大体、居候だけで神の一枚が描ける方がおかしい。


「あ、あ、やはり信じていないね。最後の因子は君が余命一年だからよ」


 !!!


 余命一年、最初は驚いたがこの人生に悔いは無かった。


「やはりそうだ、君は死を拒まない。生物である以上、遺伝子を後世に残すのが真理、君はそれを放棄している。だから、私の探している適合者だ」


 どうやら、死よりも神の一枚を残す事の方を優先するから魔女のアズチが探していた適合者らしい。


 さて、死ぬのも決まった事だし、学校にでも行くか。


 私は朝食を食べ終わると高校に行く支度を始める。


「アズチ、貴女はどうする?」

「せっかくだ、私も行こう」


 そう言うとアズチは女子の手のひら程の可愛い魔女のストラップに変わる。


 あああ、ついてくるのか……。


 私は大きなため息を吐く。


「前にも言ったが私は孤独を好む」

「私も前にも言ったが魔力が尽きている。人間達の生気が必要なのだよ」


 渋々、リックサックにアズチを付ける。その後、バス停までの道のりを独りで歩く。


 この魔女のアズチはかなり頭の切れる人物だ。正体がバレて大騒ぎになる心配はない。


 バス停に着き、バスを待つ。


 私は青空に向かってスマホで一枚撮り、SNSに上げる。


 イイネの数はそれなりにつく。


 ある意味不思議な話だ、空は皆に平等にあるはずなのに……。


 私は自分の遺伝を残す事と比べる。そう、私が哲学者になったら『青空は平等だが自分の遺伝子を残す事は平等でない』などと言う事にした。

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