月夜の魔女

霜花 桔梗

第1話 月夜に魔女が現れた

 私は独りであった。名前は『桐野 美琴』である。


 そう、両親は海外で働いていた。そして独り暮らしの理由は発展途上国なので治安が悪く、若い娘はよべないのが理由だ。


 それでも私は高校生だ、日本でなら一人暮らしも問題ない。今日も誰も居ない自宅に帰る。コンビニで買ったお弁当が夕食だ。


 その後、自室で油絵の道具を取り出して。


 鏡を用意して自画像を描く。


 これが孤独……。


 すると、窓をノックする音が聞こえる。ここ二階だよ?


 私は戸惑いながら静かに窓を開ける。そこに居たのは大きな箒に乗る黒装束の魔女であった。


「私の名前は『アズチ』旅の魔女です」

「旅の魔女さんが私に何用?」

「君は孤独だね。孤独は私の好物でね。また、私は魔力が尽きかけてね。この家に泊まってもいい?」


 魔女のアズチの目は紅く輝いていた。しかし、不思議と危険性は感じられなかった。


 それは空には満月ある夜であった。


 私は魔女のアズチを部屋に招き入れると。カップラーメンを与える。


 アズチは言った。


「私達は対等よ、私に生きるスペースを与えるなら、君の願いを叶えよう」


 私の欲しいモノ……。


 それは簡単だ、神一枚を描きたい。例えるならゴッホのひまわりの様な一枚だ。


 それはどんなに願ってもたどり着けない神の領域だ。


「それで、私の願いは何時叶えてくれるの?今すぐにでも、お願いしたいわ」

「私の魔力が尽きていてね。今すぐは難しいのだよ」


 使えない魔女だ、私は油絵の道具を片づけると。寝る準備を始める。


「アズチ、一緒に寝る?」

「それは嬉しい提案だが、あいにく独りを好むのだよ」


 結局、アズチは一階のソファーで寝る事になった。


 独りを好むか……私もだ。


 私はベッドに横になると、天井を見上げる。その後、薄い天井の灯りに向かって、腕を上げる。掴めそうな希望か……。


 アズチとの出会いは神の一枚への特急券を貰った気分だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る