第18話 クリスマスパーティー

 緑が丘駅のロータリーに、『いっこのおでん屋台』はありません。

現在、サンロード名店街にある、おでんの店を改装中なのです。

そして、よしくんの神戸での仕事もそろそろ、終わりに近づいて来ました。

今夜、よしくんは、仕事終わりにサンロード名店街の『スナック奈美』に向かいます。

クリスマス・パーティーです。

ママの奈美さんは、お店を貸し切りにして、いっこ、よしくん、奈美さん、ロマンちゃんでクリスマス・パーティーを開催したのです。

店内の中央には、クリスマス・ツリーが飾られ電飾が輝いています。

ママの奈美さんは、三角帽子を被りデリバリーのピザを用意しました。

ロマンちゃんは、シャンパンをグラスについでいます。

ただし、いっこは、ノンアルコールのシャンパンです。

いっこは、お店からおでんを持って来ました。

鶏の手羽を焼いてからおでんにしたクリスマス・バージョンのおでんです。

奈美さんの挨拶です。

 「みんな、今年は、ご苦労さまでした。そして、何より嬉しいことは、いっことよしくんのおでん屋台風のお店のオープンです」

みんなは、グラスを持ちます。

 「それではーっ、 メリー・クリスマス! かんぱーい!」

ロマンちゃんが、クラッカーを、パーンッと鳴らしました。

よしくんは、いっこに、言います。

 「いっこ、これからも、よろしくね!」

いっこは、よしくんに、言います。

 「こちらこそ、いっこをよろしくね!」

ロマンちゃんが、カラオケをスタートさせました。

 「まず、1番バッターは、いっこさんの『つぐない』です。どうぞーっ」

いっこが、マイクを持って歌います。

 「♪まーどーに、にしーびがー、あたるー、へやはー♪」

奈美さんが、よしくんの側に来ました。

 「ほんとー、よしくんが、いっこの前に現れたこと、よかったわ」

よしくんは、

 「人生も終わりに近付いていたのに、いっこと出逢えて、しあわせです」

ロマンちゃんが、いっこに声援を送ります。

 「いぇーいっ、 歌詞が暗いけどーっ、 がんばれーっ!」

奈美さんが、しんみりと続けます。

 「これで、やっと、いっこの心も開放されたのね」

よしくんは、一生懸命に歌う、いっこを見ながら、

 「いっこを、しあわせにします」

と、力強く言います。

すると、ロマンちゃんが、

 「何話してるの? 二人とも暗い顔をしてー」

と、大声を出しました。

いっこは、歌いながら、こちらを見てびっくりした顔をしますが、歌い続けます。

慌てて、奈美さんとよしくんが、いっこの方を見てタンバリンやマラカスを手に持って声援します。

何時に無く賑やかなので、お店の裏に集まっていた狸や狐たちが、慌てて逃げていきました。

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