第16話 おでん屋台の将来1
よしくんは、緑が丘駅の自動改札を出ると、いっこの屋台に急ぎます。
今夜は、いつもとは違います。
スナック奈美のママや、ロマンちゃんも屋台に集まります。
よしくんが、スナック奈美のお店に電話して、今夜、いっこのおでん屋台の将来について話し合うことになっていたのです。
屋台が見えてきました、屋台の丸椅子には、すでに、ママとロマンちゃんが座っています。
これで、よしくんが加われば満席、満員御礼です。
「こんばんは、いっこ。 そして、ママ、ロマンちゃん」
と、よしくんが挨拶すると、
いっこが、いつものように、
「よしくん、 おかえりなさい」
と、よしくんを、迎えます。
さらに、今夜は、ママの奈美さんが、お酒を勧めてくれます。
「よしくん、 お疲れ様、 気分を解すためにねー」
すると、ロマンちゃんも、
「賛成! 飲も、 飲も!」
ロマンちゃんが、はしゃぎます。
しかし、奈美さんが、すかさず制します。
「ロマン、 今夜は大切な話しなんだから、 飲み過ぎ禁止よ!」
ロマンちゃんは、
「はいー」
と、ちんまりします。
いっこは、にこにこしながら、みんなのお皿におでんを取ります。
そして、よしくんが、みんなの顔を見回して、話しを始めます。
「みなさん、今夜は、いっこのおでん屋台の将来について、気兼ねの無いご意見をお願い致します」
ロマンちゃんが、パチパチと拍手します。
「よしくん、硬いなぁ。 いっこ? よしくんも言ってるように、屋台営業は、もう、無理だと思うの。 率直に言って」
と、奈美さんが口火を切ります。
続けて、
「いっこは、どうなの? まだ、続けたい?」
奈美さんが、いっこに聞きます。
すると、いっこの表情が曇ります。
「いっこにとって、とても好きな屋台なの、 この屋台は…」
よしくんが、言います。
「いっこの体力的にもそろそろ限界だろうし、屋台は終わりにするべきだと思う」
奈美さんが、言います。
「いっこにとって、思い出深い屋台だからね。 でも、夏場は、屋台では無くて、お店でおでん売っているんだから、屋台に執着する必要ないんじゃない?」
しばらくすると、さっきから黙っていた、いっこが、ゆっくりと言います。
「みなさんの言う通りです。 いっこの屋台は、終わりにするのが良いと思います…」
みんなは、いっこの寂しそうな様子に、いたたまれなくなり、沈黙が続きます。
緑が丘駅に電車が入って来ました。
しばらくして、車掌さんの笛でドアの閉まる音が聞こえて来ます。
ピーッ、ゴゴゴー
「では、どうしたら良いのですか? みなさん?」
ロマンちゃんが、みんなに問いかけます。
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