第8話 屋台の手伝い

 よしくんは、緑が丘駅の自動改札を出ると、いっこのおでん屋台を目指します。

乗客が複数人一緒に改札を出ますが、よしくん以外の人は、闇に消えて行きます。

 「こんばんは、 いっこ」

よしくんは、端の丸椅子に座ります。

 「おかえりなさい。 よしくん」

いっこが、笑顔で迎えます。

 「今日は、薄揚げで巾着を作ったよ」

いっこは、お皿を持つと、

 「まず、これ」

と、言って、いっこが菜箸で、お皿に取ってくれたのは、お餅入り。

 「はい、続いて、これ」

いっこが、2つ目に取ってくれたのは、チーズ入りでした。

 「お腹減ってたから、いいなぁ、 暖まるし、 とっても美味しく出来てるよ」

いっこは、嬉しそうに、

 「よかった、 よしくんに喜んでもらえるおでんの具を考えたの」

と、言って、優しくよしくんを見つめます。


 よしくんは、しばらく、美味しいおでんの味を堪能していましたが、おもむろに、割り箸を置くと話を始めました。

 「いっこ、 明日の土曜日は、 会社が休みだから、いっこのおでんの仕込みとか屋台の移動を手伝いたいんだ」

いっこのおでん屋台は、日曜日だけ休みで、日曜日以外は、営業していました。

いっこは、少し驚いたようです。

よしくんは、元気な声で言います。

 「昔、 お弁当工場でアルバイトしたことあるんだ。 そのときの割烹着や白ズボン、帽子を持ってるから、服装は、大丈夫だよ」

そして、よしくんは、

 「もちろん、 終電の閉店まで手伝うよ。 屋台の撤収もやる。 帰りは、タクシーで帰るから」

いっこは、

 「よしくん、大変だよ。 それは。 でも、嬉しいよ」

そして、いっこの考えるときの癖で、 両目で斜め上を見て、

 「土曜日は、サンロード商店街でハロウィンがあるの。 子供たちは、銀行や郵便局でもお菓子を貰えるみたいなのね。 いっこの屋台は、子どもたちにおでん配ろうかなって」

更に、

 「紙コップにハーフサイズの具のおでん入れて用意するから、 よしくんにも手伝ってもらうね」

と、言ってくれました。

よしくんは、

 「じゃあ、 いいんだね。 手伝い。 いっこの家は、どこ? 何時頃行けばいいかな?」

よしくんも、嬉しそうです。

 「もともと、 いっこの家は、サンロード名店街のおでん屋だったの。 今は、この屋台がお店だけど。 お昼頃でいいよ。 お昼一緒に食べようよ」

いっこは、そう言うと伝票の裏に簡単な地図を書いてくれました。

よしくんは、その伝票を受け取ると、いっこを見つめ微笑みました。

よしくんは、屋台の手伝いを申し出て、良かったと思いました。

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