第4話 奈美ママとロマン
よしくんは、昨日と同じ時刻に緑が丘駅の自動改札を出るとロータリーの屋台を目指します。
でも、今日は、屋台の丸椅子に女性が二人座っているようです。
いつもと、様子が違います。
よしくんは、恐る恐る屋台に歩み寄り、一つ空いている丸椅子に腰掛けます。
「こんばんは…」
よしくんが、いっこに挨拶すると、
「よしくん、おかえりなさい」
と、元気に、いっこが返します。
そして、よしくんが丸椅子に座ると、髪の長い美人がこちらを向き、
「こんばんは、 おでんいっこを、ご贔屓にありがとうございます」
すると、いっこが、
「よしくん、 こちらは、スナック奈美のママの奈美さん。 隣は、ママのお店の女の子のロマンちゃん」
よしくんは、女性に囲まれて緊張してしまいました。
「ど、どうぞ、よ、よろしく…」
奈美さんは、
「いっこから聞きました。 毎晩、この屋台に寄ってくれていること。 この屋台、お客さんゼロでしょう?」
と言って笑います。
いっこは、少しむっとして、
「お気遣い、 ありがとうございます」
と、言って、一緒に笑います。
ロマンちゃんは、だいぶ酔が回っているようで、ハイ・テンションです。
「ロマンでーす。 よしくんも呑んでくださいよー。 いっこさん、お酒くださーい」
ママは、
「ロマン、もう、やめておいてよ。 あんた、重くておんぶ出来ないからね!」
すると、ママにしなだれかかったロマンちゃんが、
「ママー、 今日は、お店休みなんだからーっ、 ねっ? いいでしょ? もう一杯ね~」
ママは、
「しょうがないわねぇ… あと、一杯だけよ」
と、言っていっこに、ジェスチャーでお酒をオーダーします。
いっこが、お酒の準備をしているとき、奈美さんは、お店の名刺をよしくんに渡して、 道路を指差すと、
「その駅前の道路を、 まっすぐ行くとサンロード名店街があるの、 駅側から数えて3軒目が、私のお店なの」
よしくんは、名刺を受け取ると奈美さんに言います。
「明日伺います。 そのあと、いっこの屋台に行きます」
奈美さんは、
「よしくん、 まじめだなぁ。 いいよ、いいよ」
それを見ていた、ロマンちゃんは、お酒を一口飲むと、
「よしくん~、 ママがー、 誘惑すると思うから気を付けるのよー」
すると、いっこが、
「何ー? アホなこと言ってるのー? まったくー」
と、ロマンちゃんに合わせていました。
みんなで笑いが止まりません。
今夜は、何時になく賑やかです。
毎日、こんななら、いっこの屋台も繁盛するのに、と、よしくんは、みんなの笑顔を見回しました。
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