第14話

ところで球体である。一連の騒動を

巻き起こしたこの球体であるが

とある出来事によって私はそのことを

思い出したのだ。

思い起こさずを得なかったのだ。


ー南街道近辺で謎の球体を発見ー


それはテニスボールにしては小さく、

サッカーボールにしては大きく、

私の記憶上の球体そのものだった。

それによるといろんな憶測が立てられた。

その不思議な柄は未来を想起させる、

宇宙からのメッセージ、その他諸々。

私はそのあったようでなかった、

そんな記憶に駆られる。

私の身の回りの人物も、

夢である可能性が高いが、

その記憶を知っていると。

「ようやく安定期に入りました」

そう、私たちのもとに命が宿った。

産婦人科へ送迎するため、私は車の鍵を探す。

「あれ、ないな」

私の様子を伺って彼女は

大丈夫?と声をかける。

「会社かな」

彼女はこちらへよってきて、

「昔に比べて、

抜けてる部分が見えてきてよかった」

それはいい意味なのか、

悪い意味か分からないまま、

彼女をそっと抱擁した。

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